セルフ型リサーチとは|実施のメリットや注意点を徹底解説

セルフ型リサーチはDIY型リサーチとも呼ばれ、調査の設計、設問作成、データの回収や集計などの作業を自分たちで行うリサーチのことです。アンケートを実施したいがなるべくコストをかけたくない場合や、好きなタイミングで手早く実施したい場合におすすめのリサーチ方法です。
しかし、自身でアンケートの設計や分析を行う必要があるため、アンケート初心者の方にとってはハードルが高いと感じられるかもしれません。また、調査規模が大きかったりニッチなターゲットへ調査したい場合は、回答者を集められるかどうかも懸念事項になるでしょう。
本記事では、セルフ型リサーチのメリットや実施時の注意点について解説します。リサーチの経験が浅いがセルフ型リサーチが気になっている方や、実施を検討したい方はぜひご覧ください。
セルフ型リサーチとは
セルフ型リサーチとは、調査の設計、作成、データの回収や集計などの作業を自分たちで行うリサーチのことです。DIY型とも呼ばれています。
セルフ型リサーチではアンケートの配信、回収、分析など調査の一連の工程を、すべて自身で行うことができます。時間や費用に融通が利くため、さまざまな場面で気軽にリサーチできることが特徴です。
しかし、調査の設計や分析にはスキルや知識が求められます。場合によっては、調査に知見のある調査会社へ依頼したり、調査結果を分析できる人材を確保したりすることも念頭に置く必要があります。
セルフ型リサーチの種類
セルフ型リサーチは、対象となるモニターの違いにより主に2種類に分けられます。
- モニターサイトの会員など、リサーチ会社のモニターを対象にアンケートを行うもの
- 自社サービスの会員などを対象にアンケートを行うもの
自社でモニターが用意できるのであれば後者のタイプで良いですが、そうでない場合は、リサーチ会社のモニターを対象としたタイプで実施するとよいでしょう。
ちなみに、リサーチ会社によって、利用可能なアンケートモニター数が異なります。例えばアンケートの想定ターゲットが絞られている場合でも、幅広い属性からの回答を得たい場合でも、より多くのモニターにアンケートを実施できるリサーチ会社の方が、回答を多く得やすいでしょう。
そのため、リサーチ会社のモニターを対象に実施する場合は、どの程度モニターを保有しているかを事前に確認しておくことが大切です。
セルフ型リサーチを実施する2つのメリット
セルフ型リサーチを行うメリットは、以下の2点があります。
1.安価でリサーチが実施できる
セルフ型リサーチでは、アンケートの配信、回収、分析など調査の一連の工程を、すべて自身で行います。設問数や回収数によって料金が決まる場合が多いため、フルサービスで調査会社に依頼するよりも手ごろな価格でアンケートを実施できます。
2.調査の設計から実施、回収までが早い
通常のネットリサーチでは、調査会社に全作業を委託して行います。リサーチのプロに任せられる安心感がある反面、連携のための工数や調査にかかるコストが増えがちです。
しかしセルフ型リサーチでは、調査会社の見積もりやアンケート作成までの細かなやりとりを行う必要がありません。調査開始日時や回収期日まで、自身で決定できます。そのため、工数やコストを抑えて調査を行いたい、好きなタイミングで手軽に調査を行いたいという方におすすめです。
セルフ型リサーチの実施前に考慮すべき3つのポイント
工数削減やコストを抑える点でメリットがあるセルフ型リサーチですが、安易な実施では思ったような成果を得られない場合もあります。
本章では、セルフ型リサーチを検討している方が事前に考慮すべき3つのポイントを解説します。
1.アンケートの設計を自身で行えるか
リサーチを実施する時は、目的設定から設問内容・ボリューム、設問の言葉遣いの選定まで、一つひとつステップを進めてアンケートを作成していきます。
- アンケートの目的と仮説を明確にする
- 質問項目に抜け漏れがないようにする
- 回答者が迷うような質問項目の言葉遣い(ワーディング)を避ける
- 回答しやすい質問順にする
- 回答しやすい質問ボリュームにする
- アンケートの配信前にテストを実施する
より精度の高い調査結果を得るためには、これらのポイントを細かに検討し、必要な回収数についてもある程度見込みを持っておく必要があります。セルフ型リサーチの場合はこういった検討事項をすべて自身で行わなければならず、アンケートの実施経験や設問設計に関する知識が必要不可欠になります。
もし、アンケート作成が初めての場合は、リサーチ会社の提供するテンプレート活用や、設問設計のスキルを持つ社員の確保、知識習得を行うようにしましょう。それでも自信のない場合は、調査会社へ依頼することも検討すべきでしょう。
成果の出るアンケート調査票を作成したい方は、「成果が出るアンケート調査票の作り方は?具体的な作成ステップを解説」をご覧ください。
2.モニターを集められるか
セルフ型リサーチでは、どのモニターを対象にするかも自分で決める必要があります。リサーチで適切な成果を得るためには、必要な回収数を十分に確保できるかが重要な要素になります。モニターが集まらない場合、データの信頼性が低下し、調査結果の有用性が問われる可能性があるからです。
そのため、あらかじめ十分なモニター数を確保できるか、事前に確認しておきましょう。特に、調査規模が大きい場合やニッチなターゲットを対象とする場合、社内でのモニター確保が難しい場合は、リサーチ会社のモニター利用も検討しておくとよいでしょう。
先述の通り、リサーチ会社によって利用可能なアンケートモニター数は異なります。さまざまな属性のモニターからデータを集めるためにも、できるだけ多くのモニター数を持っているリサーチ会社を選択するようにしましょう。
3.アンケート結果を自身で分析できるか
アンケートは実施して終わりではなく、その後のマーケティング施策に活用するまでが重要です。
調査会社に依頼する場合は分析データを納品してもらえますが、セルフ型の場合はローデータやクロス集計表でのデータ納品など、分析作業は自分で行わなければいけない場合もあります。アンケート実施後にどのように分析を進めるか、施策に活用できるか、といった点は事前に考慮しておくようにしましょう。
クロス集計とは、複数の変数間の関係を分析するために使用される手法です。詳しくは、「クロス集計のやり方は?自社でアンケート結果を分析できるようになろう」をご覧ください。
また、BIツールを活用した分析方法もあります。BIツールとは、ビジネス上の意思決定を支援するための分析ツールです。BIツールを使用することで、データの可視化、分析、共有、自動化、予測分析などが可能になり、企業は迅速かつ正確な意思決定を行うことができます。詳しくは、「【事例あり】データ分析にはBIツールの活用がおすすめ|機能やメリットを解説」をご覧ください。
セルフ型リサーチの活用場面3選
自分でアンケートを設計できるセルフ型リサーチは、時間や費用に融通が利くため、さまざまな場面で気軽にリサーチできることが特徴です。本章では、セルフ型リサーチの具体的な活用場面を3つ紹介します。
1.WebサイトやアプリのUI/UX評価調査(アジャイルリサーチ)
セルフ型リサーチは、WebサイトやアプリのUI/UX評価調査を行う際に役立ちます。
UI/UX評価調査とは、ユーザーインターフェース(UI:利用者と製品やサービスとの接点)とユーザーエクスペリエンス(UX:製品やシステム、サービスなどの利用を通じてユーザーが得る体験)の品質を評価するための調査手法です。
UI/UX評価調査では短期間で調査を繰り返すアジャイルリサーチを行うことが多いため、スピーディにリサーチが行えるセルフ型リサーチが適しています。例えば、以下のような設問により、WebサイトやアプリのUI/UX評価調査を行えます。
- このWebサイト/アプリケーションの利用感についてどのように感じましたか?
- このWebサイト/アプリケーションを使うことで、目的を達成するのにどの程度時間がかかりましたか?
- このWebサイト/アプリケーションを使用する際に、どのような問題がありましたか?
セルフ型リサーチで短期間かつ小規模なリサーチを繰り返し行い、その結果に基づいて迅速かつ柔軟に対応を進めれば、スピーディに効果的なWebサイトやアプリケーションの改善が実現します。
アジャイルリサーチの利点や活用例、実施する際に必要なものについて詳しく知りたい方は、「アジャイルリサーチとは?メリットや具体的な活用法をご紹介」をご覧ください。
2.ブランド認知度調査
セルフ型リサーチは、継続的な調査も安価かつ簡単に行えるため、ブランド認知度調査にも役立ちます。ブランド認知度調査とは、自社ブランドを認知している人がどのくらいいるか、消費者が自社ブランドに対してどのような印象を持っているか、などについて調べる調査です。
例えば以下のような設問により、競合と比較した際のブランドの認知度を測ることができます。
- あなたが最も好きな缶コーヒーのブランドは何ですか?
- あなたが最も信頼する旅行会社として選ぶものは何ですか?
- あなたが今後利用したいと思うSNSサービスは何ですか?
上記のような設問を、セルフ型リサーチで異なる対象に一定期間繰り返し実施することで、施策の効果やブランド認知度の推移を明らかにできます。
ブランド調査の種類や目的、調査設計のポイントなどついて詳しくは「ブランド調査|アンケートで自社のブランディングを向上させる方法」をご覧ください。
3.自社プロダクトの満足度調査(パネル調査)
セルフ型リサーチは、自社プロダクトの満足度調査にも役立ちます。満足度調査には、消費者の動向の変化や商品の販売推移を知れるパネル調査が適しています。パネル調査とは、同じ対象に同じ質問を、一定期間のあいだに何回も行う調査方法です。
例えば、以下のような設問で自社プロダクトの満足度調査を行えます。
- この製品を購入した理由は何ですか?
- この製品を再購入するつもりはありますか?
- この製品を他の人に勧めますか?
調査会社へ依頼してアンケートを行うと、時間やコストがかかります。セルフ型リサーチなら、時間やコストを抑えて繰り返しパネル調査が行えます。
また、既存顧客を対象に、商品・サービスの満足な部分、不満に思っている部分を調査し、改善施策につなげていくためのCS調査にも、セルフ型リサーチは役立ちます。
満足度調査と同様、継続的に調査を行うことで、施策のチェックや評価を行えます。CS調査について詳しくは、「CS調査とは?よくある失敗と効果的な調査を行うための6つのポイント」をご覧ください。
まとめ|安価かつスピーディにアンケートを実施したいなら、セルフ型がおすすめ
セルフ型リサーチは、コストが比較的安く、スピーディーに実施できます。コストをかけずに継続的にアンケートを実施したい場合におすすめの方法です。
特に、オンラインアンケートを実施する場合は、専用のアンケートツールを使用することで、アンケートの作成から回答集計まで、ほとんどの作業を自動化することができます。また、モニターにとっても、自宅やスマートフォンから簡単に回答できるため、回答率が高くなる傾向があります。
ただし、セルフ型リサーチは、アンケートの設計から分析まですべて自分で行う必要があり、アンケート実施の経験や分析の知識が不可欠です。
よくある質問
Q1.セルフ型リサーチを実施するメリットは何ですか? |
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セルフ型リサーチのメリットとして、主に以下の2つが挙げられます。 1.安価でリサーチが実施できる 2.調査の設計から実施、回収までがスピーディ 各メリットについての詳しい説明は、「セルフ型リサーチを実施する2つのメリット」の章をご覧ください。 |
Q2.セルフ型リサーチを実施する際に気をつけることは何ですか? |
セルフ型リサーチを実施する際に気をつけるポイントとして、主に以下の3つが挙げられます。 1.アンケートの設計を自身で行えるか 2.モニター数を集められるか 3.アンケート結果を自身で分析できるか 各メリットの詳しい説明は、「セルフ型リサーチの実施前に考慮すべき3つのポイント」の章をご覧ください。 |
Q3.セルフ型リサーチはどのような場面で活用できますか? |
この記事では、セルフ型リサーチの活用場面として以下の3つを挙げています。 1.WebサイトやアプリのUI/UX評価調査(アジャイルリサーチ) 2.ブランド認知度調査(トラッキング調査) 3.自社プロダクトの満足度調査(パネル調査) 各活用場面についての詳しい説明は、「セルフ型リサーチの活用場面3選」をご覧ください。 |