MROCとは?消費者の本音を引き出すリサーチ手法と調査会社を解説

MROC(エムロック)は、Marketing Research Online Communityの略称で、オンライン上に設けた専用コミュニティで参加者同士が自由に対話することで、従来の調査手法では得られなかった深層的なインサイトを探る新しいマーケティングリサーチ手法です。企業が「知りたいこと」を直接質問するのではなく、参加者の会話から「知るべきこと」を発見するアプローチが、商品開発やマーケティング戦略の立案に新たな価値をもたらしています。
MROCの基本的な仕組みと調査の進め方
MROCは、特定のテーマに関心を持つ消費者をオンライン上の期間限定で運営されるクローズドなコミュニティに集め、一定期間にわたって意見交換を行いながら、企業が本当に必要とする生活者の本音や潜在ニーズを掘り起こす調査手法です。従来の単発的なアンケートやインタビューとは異なり、継続的な対話を通じて参加者同士の信頼関係を構築し、より深い洞察を得ることを目的としています。
10~100名が2週間~数ヶ月対話するオンラインコミュニティ調査
MROCでは通常、10名から100名程度の参加者を募集し、2週間から数ヶ月、場合によっては1年以上の期間にわたってオンラインコミュニティを運営します。参加者は企業の商品やサービスに関わりのある顧客層、ファン、見込み客などから選ばれ、事前のスクリーニング調査を経て適切な人選が行われます。
調査期間中は、リサーチ会社のモデレーターやコミュニティ・マネージャーが議論をファシリテートし、企業の担当者もコミュニティ内の様子を観察したり、必要に応じて参加者と直接やり取りすることが可能です。参加者の人数は調査目的によって異なりますが、多くの場合20~30名程度で構成され、議論が活発になりすぎず、かつ多様な意見が得られる規模に設定されます。
期間についても柔軟に設定でき、短期集中型の2週間程度から、長期観察型の数ヶ月まで、調査目的や商品特性に応じて最適な期間を選択できることがMROCの大きな特徴となっています。
掲示板・アンケート・日記投稿を活用した情報収集
MROCのコミュニティ内では、複数の情報収集手法を組み合わせて多角的なデータを収集します。中心となるのは掲示板形式のディスカッションで、モデレーターが提示したトピックに対して参加者が自由に意見を投稿し、他の参加者のコメントに返信することで議論が深まっていきます。
これに加えて、定量的なデータを収集するためのアンケート機能、日常生活での商品使用状況を記録する日記形式の投稿、実際の使用シーンを撮影した写真や動画の共有など、様々な手法を状況に応じて使い分けます。例えば、新商品のコンセプト評価では掲示板でのディスカッションを中心に行い、使用感の変化を追跡する場合は日記投稿を活用するなど、調査目的に最適な手法を選択できます。
このようなマルチモーダルなアプローチにより、数値データだけでは見えてこない消費者の感情や行動の背景、言語化されにくい潜在的なニーズまで把握することが可能になります。
参加者同士の自由な会話が生み出す想定外の発見
MROCの最大の特徴は、参加者同士の自由闊達な議論から生まれる「想定外の発見」にあります。従来の調査では、企業側が用意した質問に対して参加者が回答する一方向的なコミュニケーションが中心でしたが、MROCでは参加者同士が互いに刺激し合いながら議論を展開していきます。
ある参加者の発言が他の参加者の記憶や経験を呼び起こし、それがさらに別の視点を生み出すという連鎖反応により、企業側が当初想定していなかったインサイトが次々と浮かび上がってきます。例えば、ある化粧品の使用感について議論している中で、参加者同士のやり取りから「朝と夜で求める効果が全く違う」という発見があり、それが新たな商品開発のヒントになったケースもあります。
このような参加者主導の対話は、モデレーターが適度な距離を保ちながら議論を見守ることで実現します。過度な介入は自然な会話を妨げるため、参加者の自主性を尊重しながら、必要な時だけ話題提供や軌道修正を行うバランス感覚が重要となります。
従来調査では聞き出せない本音を引き出すMROCの価値
MROCは時間をかけて参加者との信頼関係を構築することで、従来の短時間調査では得られなかった深層心理に迫ることができます。初対面の調査員に対しては遠慮や建前が先行しがちですが、数週間にわたってコミュニティ内で交流を重ねることで、参加者は徐々に心を開き、本音を語り始めます。
オンラインかつ匿名での参加という特性も、率直な意見表明を促進します。対面では言いにくい商品への不満や、デリケートな悩み、金銭的な問題なども、顔の見えない環境だからこそ安心して共有できるのです。
さらに、継続的な観察により、単発調査では捉えきれない意識や行動の変化も追跡できます。商品を使い始めた直後の高評価が、2週間後には不満に変わるといった時系列での変化を把握することで、より実態に即した商品改良の指針を得ることができます。
MROCを導入する4つのメリット

MROCは従来の調査手法にはない独自の価値を提供し、企業のマーケティング活動に大きなメリットをもたらします。ここでは、MROCを導入することで得られる主要な4つの利点について詳しく解説します。
時間をかけた交流で参加者の本音を引き出せる
MROCの第一のメリットは、長期間にわたる継続的な交流により、参加者の本音に近い意見を引き出せることです。数週間から数ヶ月という期間を通じて、参加者同士が互いの人となりを理解し、安心して発言できる環境が醸成されていきます。
匿名性が保たれたオンライン環境であることも、本音を引き出す重要な要素です。実名や顔を出さずに参加できるため、社会的な体裁を気にすることなく、商品に対する率直な評価や、普段は口にしにくい不満も素直に表現できます。
実際の事例では、ある健康食品の調査において、最初は「効果を感じている」と肯定的だった参加者が、1ヶ月後には「実は味が苦手で続けるのが辛い」という本音を打ち明け、それが商品改良の重要なヒントになったケースもあります。このような深い洞察は、短時間の調査では決して得られないMROCならではの成果といえます。
定量データと定性データを同時に収集できる
MROCは「ハイブリッド型調査」とも呼ばれ、一つのコミュニティ内で定量調査と定性調査を同時に実施できる点が大きな強みです。掲示板でのディスカッションから得られる定性的な洞察と、アンケート機能による定量的なデータを組み合わせることで、より立体的な消費者理解が可能になります。
例えば、ある新商品コンセプトについて、まずアンケートで全体的な評価傾向を把握し、その後ディスカッションで「なぜそう評価したのか」という理由を深掘りすることができます。逆に、議論の中で出てきた仮説を、すぐにミニアンケートで検証することも可能です。
このような柔軟な調査設計により、数値の裏にある消費者心理を理解し、統計的な裏付けのある質的洞察を得ることができます。従来は別々に実施していた定量調査と定性調査を統合することで、調査期間の短縮とコスト削減も実現できます。
商品開発中でも素早く方向修正できる
MROCはアジャイル型の商品開発プロセスと非常に相性が良く、開発途中での迅速な軌道修正を可能にします。同じ参加者コミュニティに対して、コンセプト評価→改良案の提示→再評価というサイクルを何度も繰り返すことができるため、市場のニーズに合致した商品を効率的に開発できます。
ある飲料メーカーでは、新商品のプロトタイプをコミュニティメンバーに試飲してもらい、その場で得られたフィードバックを基に味やパッケージを修正し、2週間後に改良版を再度評価してもらうという反復的なプロセスを実施しました。この結果、当初案から大幅に改善された商品が完成し、発売後も好調な売上を記録しています。
このような機動的な検証とピボットは、従来の段階的な調査プロセスでは実現困難でした。MROCなら開発初期から顧客の声を継続的に取り入れ、失敗リスクを最小限に抑えながら、市場に受け入れられる商品を生み出すことができます。
地域や時間の制約なく幅広い参加者の声を集められる
オンラインで実施するMROCは、地理的・時間的な制約を受けずに多様な参加者の声を収集できます。全国各地、さらには海外在住の消費者も対象にでき、参加者は自分の都合の良い時間にアクセスして投稿できるため、従来の会場調査では参加が難しかった層からも貴重な意見を得られます。
例えば、子育て中の主婦、介護をしている人、地方在住者、夜勤労働者など、日中の調査参加が困難な人々も、スマートフォンやPCから気軽に参加できます。ある企業では、早朝や深夜に使用頻度が高い商品について、実際にその時間帯に参加者から投稿してもらうことで、より実態に即した使用状況を把握することができました。
また、企業側にとっても、全国の支社スタッフや海外拠点のメンバーがリアルタイムでコミュニティの様子を観察できるため、組織全体で消費者の声を共有し、迅速な意思決定につなげることが可能です。
MROCが成果を生む4つの活用シーン

MROCは様々なマーケティング課題に応用できる汎用性の高い調査手法です。ここでは、特に効果を発揮する代表的な4つの活用シーンについて、具体例を交えながら解説します。
新商品開発:アイデア段階から発売まで継続的に消費者の声を反映
新商品開発プロセスにおいて、MROCはアイデア創出から発売準備まで各段階で消費者インサイトを継続的に取り入れる強力なツールとなります。開発初期のペルソナ設定やニーズ探索から始まり、コンセプト評価、プロトタイプテスト、最終仕様の決定まで、一貫して同じコミュニティメンバーから意見を収集できます。
ある食品メーカーでは、新しいスナック菓子の開発において、20~40代の継続購入者50名を集めた1ヶ月間のMROCを実施しました。最初にライフスタイルや間食習慣についてディスカッションを行い、そこから導き出されたインサイトを基にコンセプト案を作成。コミュニティ内での評価と改良を3回繰り返した結果、当初案とは全く異なる革新的な商品が誕生しました。
このようにMROCを活用することで、開発チームの思い込みを排除し、真に消費者が求める商品を作り上げることができます。さらに、開発に参加したコミュニティメンバーは商品への愛着も強く、発売後の口コミ拡散にも貢献してくれる可能性があります。
商品改善:化粧品・食品など使い続けて分かる本当の評価を把握
既存商品の改良やリニューアルにおいて、MROCは継続使用による評価の変化を詳細に追跡できる点で大きな価値を発揮します。特に化粧品や健康食品など、一定期間使い続けて初めて効果や問題点が明らかになる商品では、短期的な調査では捉えきれない真の評価を把握することが重要です。
実際の事例として、ある化粧品メーカーが新発売の化粧水について、30~50代女性30名を対象に2ヶ月間のMROCを実施したケースがあります。使用開始直後は「しっとり感が良い」と高評価でしたが、2週間後には「べたつきが気になる」という意見が出始め、1ヶ月後には季節による使用感の違いも明らかになりました。
これらの時系列データを分析することで、使用直後の印象と継続使用後の評価のギャップ、季節や肌質による違い、離脱要因などを詳細に把握でき、的確な商品改良につなげることができました。従来の数日間のホームユーステストでは見えなかった、継続使用だからこそ分かる貴重なインサイトがMROCによって得られるのです。
顧客満足度向上:既存ユーザーの不満や要望を深く理解
自社製品やサービスの既存顧客の満足度を高めるためには、表面的なアンケート結果だけでなく、その背景にある深い理由や感情を理解することが不可欠です。MROCは顧客との継続的な対話を通じて、日常的な顧客接点では拾いきれない潜在的な不満や期待を体系的に収集できます。
ある飲食チェーンでは、常連客を中心としたファンコミュニティを立ち上げ、店舗では聞けない本音の意見を収集しています。新メニュー導入時には、コミュニティメンバーから投稿された写真や感想から、想定通りの受け入れられ方をしているかを確認し、問題があれば迅速に改善策を講じています。
また、コミュニティ内で企業担当者が直接顧客と対話することで、「実は以前から気になっていたが言えなかった」という隠れた不満を発見することもあります。このような本音の収集と迅速な対応により、顧客ロイヤリティの向上とLTV(顧客生涯価値)の最大化を実現できます。
ファンマーケティング:熱心な顧客と一緒に商品を作る共創プロジェクト
MROCは熱狂的なファン層との共創(コ・クリエーション)を実現する理想的なプラットフォームです。自社ブランドを強く支持してくれるファンをコミュニティに招き、新商品のアイデア出しから企画、開発まで一緒に取り組むことで、ファン心理に深く刺さる商品やサービスを生み出すことができます。
実際に、あるスナック菓子メーカーでは、ブランドのファン50名を集めたコミュニティで新フレーバーの共同開発を実施しました。ファンからは「実は以前からこんな味が欲しかった」「パッケージはもっとこうしてほしい」といった積極的な提案が次々と寄せられ、企業側も驚くような斬新なアイデアが生まれました。
このような共創プロセスは、単に良い商品を作るだけでなく、参加したファンのエンゲージメントをさらに高める効果もあります。自分たちが開発に関わった商品への愛着は強く、SNSでの拡散や口コミによる新規顧客獲得にも大きく貢献します。MROCを通じたファンとの共創は、ブランドコミュニティの活性化とビジネス成果の両立を可能にする戦略的アプローチといえます。
MROCサービスを提供する主な調査会社
日本国内でMROCサービスを提供している調査会社は数多くありますが、ここでは特に実績と専門性で定評のある3社について、それぞれの特徴と強みを詳しく紹介します。
日本リサーチセンター:60年の実績による信頼性の高い総合サポート

参照元:株式会社日本リサーチセンター
株式会社日本リサーチセンター(NRC)は、1960年創業という長い歴史を持つ日本有数の総合マーケティングリサーチ会社です。世論調査から市場分析まで幅広いテーマで豊富な実績を積み重ね、官公庁や大手企業からの厚い信頼を得ています。
同社の最大の強みは、約300万人規模の自社ネットパネルと全国に広がる調査ネットワークです。この圧倒的なリソースにより、「メルセデスを新車購入した人」といった特殊な条件の対象者でも確実にリクルーティングできる体制を整えています。MROCにおいても、適切な参加者選定が成功の鍵となるため、この強力なパネル基盤は大きなアドバンテージとなります。
また、ISO9001およびISO20252の認証を取得し、調査品質管理を徹底している点も特筆すべき点です。調査設計から実査、集計・分析、報告まで一貫した品質管理体制のもとで実施されるため、データの信頼性と中立性が保証されています。長年培った調査ノウハウと堅実な運営により、確実な成果を求める企業にとって安心して任せられるパートナーといえるでしょう。
株式会社10:MindSquareプラットフォームと専門家による伴走型支援

参照元: 株式会社10
株式会社10(テン)は、「共感をイノベーションにつなぐ」を理念に掲げ、MROCに特化したサービスを提供している新進気鋭のリサーチ会社です。2018年創業と歴史は浅いものの、在籍するリサーチャーは10年以上のMROC実行経験を持つベテラン揃いで、専門性の高さが際立っています。
同社の最大の特徴は、独自開発したMROC専用プラットフォーム「MindSquare(マインドスクエア)」です。このプラットフォームは、短期のアドホック調査から長期のファンコミュニティまで、あらゆるタイプのMROCに対応できる柔軟性を持ち、参加者にとって使いやすいUIと、運営側にとって管理しやすい機能を両立させています。
さらに、単にプラットフォームを提供するだけでなく、経験豊富なコンサルタントが企画設計から運営、分析、レポーティングまで伴走型で支援する体制も整えています。MROCを初めて実施する企業でも、専門家のサポートを受けながら確実に成果を出すことができる点が、多くのクライアントから評価されています。
ジャパン・マーケティング・エージェンシー:MROC導入初期から培った豊富なノウハウ

株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー(JMA)は、日本におけるMROC黎明期の2011年から この手法を導入し、国内でも最も多くの実績を積み重ねてきたパイオニア的存在です。長年の経験から蓄積された運営ノウハウと、熟練したコミュニティ・マネージャーの存在が同社の大きな強みとなっています。
JMAには経験豊富なコミュニティ・マネージャーが多数在籍しており、同時に複数のMROCプロジェクトを運営できる組織力を持っています。参加者の発言を引き出し、議論を活性化させる巧みなファシリテーション技術は、長年の実践から培われたもので、他社には真似できない財産といえます。
また、調査目的に応じて複数のプラットフォームから最適なものを選択・提案できる柔軟性も特徴です。国内外の様々なコミュニティシステムを使い分け、クライアントの課題に最も適したソリューションを提供します。さらに、簡易サマリーから詳細な考察を含むフルレポートまで、ニーズに応じたアウトプットの提供も可能で、発言の背景や少数意見にも着目して次につながるヒントを導き出す分析力にも定評があります。
消費者との対話から始める新たなマーケティングへ
MROCは、企業と消費者が継続的な対話を通じて共に価値を創造していく、これからのマーケティングに欠かせない手法として注目を集めています。従来のように企業が一方的に質問を投げかけるのではなく、消費者の自然な会話に耳を傾け、その中から課題解決のヒントを見出すアプローチは、真に消費者視点に立った商品・サービス開発を可能にします。
デジタル化が進む現代において、オンラインで完結するMROCは地理的制約や時間的制約を超えて、多様な消費者の声を集めることができる理想的な調査手法です。さらに、AIやテクノロジーの進化により、膨大な発言データから効率的にインサイトを抽出することも可能になりつつあります。
今後、顧客参加型マーケティングや共創の重要性がますます高まる中で、MROCは単なる調査手法を超えて、企業と顧客をつなぐ重要なコミュニケーションプラットフォームとして発展していくことが期待されます。消費者の本音に真摯に向き合い、共により良い商品や体験を創り上げていく。そのような対話型の新たなマーケティングの第一歩として、MROCの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
リサーチ会社探しにお困りなら
調査会社マッチング
貴社の課題をヒアリングし、課題解決に最適なリサーチや調査会社をご紹介するサービスです。
調査会社選びにお困りなら是非ご相談ください。