ペルソナとは?マーケティングでの必要性・メリット・作り方・活用の具体例まとめ

マーケティングにおいて、ターゲットとなる顧客をより具体的に設定するのがペルソナです。ターゲットのニーズを満たす商品やサービスを開発・提供するためには、ペルソナ設定が重要になります。
この記事ではペルソナのメリットや作り方、情報収集と活用方法などを解説します。
ペルソナとは
ペルソナとは、マーケティング用語として使われるシーンが多い用語です。ここでは、マーケティングにおいての「ペルソナ」の意味と、似た用語として使われる「ターゲット」との違いをみていきます。
マーケティング用語「ペルソナ」
「ペルソナ(persona)」はもともとラテン語で仮面や人格を意味し、心理学で使われる際は、人が社会的役割を演じる際の「外側の自分」として使われていた用語です。
マーケティングの分野では、自社の商品やサービスを利用する典型的なユーザー像を描いた仮想の人物モデルを指します。
また、年齢・性別・職業・価値観・行動パターンなどを具体的に設定し、その人物が最も満足する商品・サービスの仕様を設計する手法が「ペルソナマーケティング」です。
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ターゲットとの違い
ターゲットとペルソナは似ているようで、設定の深さが大きく異なります。
ターゲットは属性情報にとどまりますが、ペルソナはその中の代表的な1人を、ライフスタイルや価値観まで掘り下げて描写することが重要です。
たとえば、ターゲットは「20代男性・東京都在住・会社員」と仮定します。対してペルソナは、「29歳・男性・独身/IT企業のマーケティング担当/トレンドに敏感」のように、顔や生活が浮かぶほど具体的に落とし込みます。
ターゲットが「属性」を示すのに対し、ペルソナは「個人」を描くものです。
ペルソナを設定する3つのメリット

ペルソナ設定は、ライフスタイルや価値観まで踏み込むことで、大きなメリットが得られます。ここでは代表的なメリットを3つ紹介します。
顧客理解が深まる
ペルソナを設定すると、単なる属性データだけでは見えてこない顧客像を深く理解できるようになります。
多くの人に届けたいからとターゲット層を広げすぎると、逆に誰の心にも響かない訴求になりがちです。具体的なペルソナを描けば、その人物が日常生活で何を必要とし、どこに不便を感じているのかが明確になり、ニーズに沿った戦略を立てられます。
結果として、ペルソナに向けた施策が他の顧客層にも響く可能性が高まり、訴求力の向上につながります。
社内で共通認識を持てる
ざっくりとしたターゲット設定では、担当者ごとに思い浮かべる人物像が異なり、認識のズレが生じやすくなります。ペルソナを詳細に設定し、組織全体で共有することで、顧客理解の共通指針として機能します。
共通認識があれば、商品やサービスの方向性やイメージが一致し、一貫性のある施策を実行可能です。マーケティングや営業など部門をまたいだ活用もスムーズになり、戦略全体の整合性が高まります。
マーケティングの精度が高まる
ペルソナを共通認識として持てば、マーケティング施策の方向性がブレにくくなり、精度があがります。
具体的なニーズや関心を反映した広告やコンテンツを設計すれば、ペルソナが抱える課題や求める価値に沿ったメッセージの発信ができるようになるでしょう。ペルソナがよく利用する媒体に合わせて発信先を選び、紙媒体の広告や、Instagram・YouTubeといったSNSなどを効果的に活用します。
適切な発信計画が、反応率やエンゲージメントを高め、広告効果の最大化につながります。
ペルソナは古い?今なお必要とされる理由
近年、「ペルソナはもう古い」「時代遅れになった」といった声が一部で聞かれます。背景には、AI(人工知能)の発達やユーザーの価値観・行動の多様化があります。
しかし、情報があふれる現代において、顧客を深く理解するためのペルソナ設定は依然有効です。古いのは手法ではなく、作り方や使い方がアップデートされていないケースです。
従来のペルソナ設定だけではなく、ペルソナマーケティングをベースにAIツールによるデータ分析や行動解析を組み合わせれば、より現実に近い顧客像を描けます。
ペルソナの作り方|基本の3ステップ
詳細なペルソナの基本的な作り方を、3つのステップにわけて解説します。
1. 目的を明確にする
ペルソナを設定する際に重要なのは、まず「何のためにペルソナを作るのか」という目的をはっきりさせることです。
新商品のターゲット像を具体化したいのか、既存顧客の満足度を高めたいのかなどによって、集めるべき情報が変わります。目的に応じたペルソナ設計で、より効果的なマーケティング施策になります。
2. 情報を収集する
目的に合わせたペルソナのデータ収集では、信頼できるデータを幅広く集める必要があります。
アンケートやインタビューなど、複数の手法を組み合わせて活用すれば、より現実的な顧客像を描けます。顧客の感情や行動のデータに加え、常に変化する市場やトレンド、公表されている統計資料や最新の調査結果なども参考にしましょう。
情報の鮮度と多様性を保てば、より精度の高いペルソナ設定になります。データ収集の方法については後ほど詳しく解説します。
3.具体的なペルソナを作成する
収集したデータを整理し、典型的な「理想の顧客像」を抽出します。
ポイントは、単なる属性の羅列ではなく、実在しそうな1人の人物として具体的に描くことです。年齢・性別・家族構成・職業・趣味・価値観・購買行動などを詳細に設定し、行動や心理がイメージしやすいペルソナを作成します。
理想的なペルソナが設定できれば社内で共有しやすくなり、マーケティングや商品開発の指針として活用できます。
ペルソナ設定のための情報収集方法

理想的なペルソナを設定するための情報収集の方法はいくつかあり、必要に応じて使い分けたり複数を組み合わせたりすると、より詳細な情報が得られます。
ここでは効果の高い情報収集方法を紹介します。
アンケート調査
ペルソナを設定するためには、ユーザーの属性や行動傾向の定量的な把握が欠かせません。
アンケート調査は、年齢や性別、職業などの基本情報から、購買行動や嗜好、価値観まで幅広くデータを集められるため、ペルソナの特徴を具体的に掴むのに有効です。スピーディーでコストを抑えられるWebアンケートや、丁寧な回答が得やすく幅広い年代をカバーできる郵送調査など、調査方法を使いわけるのもポイントです。
自由回答や評価項目を組み込めば、数値だけでは捉えきれないユーザーの生の声や感情も反映できます。
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インタビュー調査
ペルソナを具体化するうえで、ユーザーの価値観や感情、行動の背景を深く掘り下げるために重要なのはインタビュー調査です。
1対1で行うデプスインタビューは、数値化できない直感や心理を丁寧に聞き出すため、ペルソナ設計に効果的です。一方、グループインタビューは複数の参加者から多様な意見を同時に収集でき、ユーザーの本音や潜在ニーズを把握するのに役立ちます。
これらの定性調査を活用すれば、より共感性の高いペルソナの作成につながります。
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アクセス解析
アクセス解析は、ユーザーのWeb上での行動を可視化し、ペルソナの行動傾向や関心ポイントを把握するのに有効です。
代表的なツールとしてGoogleアナリティクスがあげられます。性別・年齢・地域・利用デバイスといった属性情報に加え、ページ滞在時間や離脱率、流入経路などの行動データを収集できます。
ターゲット層の実態データから、ペルソナがどんな情報に興味を持ち、どこで離脱しやすいかを具体的に入手可能です。
担当者へのヒアリング
現場の知見を反映させれば、より精度の高いペルソナが作成できます。
営業担当やカスタマーサポート、ベテラン社員など、日常的に顧客と接している現場担当者から話を聞くことで、机上のデータだけでは得られないリアルな顧客像を把握できます。直接のやり取りで得た顧客の反応や課題感、購買の決め手などは、ペルソナ作成に直結する貴重な情報です。
自社でのヒアリングは、比較的短時間・低コストで行えるうえ、価値の高い顧客像を抽出しやすい点もメリットです。
ペルソナの具体的な活用方法3選
理想的なペルソナを作成したら、施策への反映が重要です。ここでは、ペルソナの具体的な活用方法を3つ紹介します。
マーケティング施策の設計
ペルソナを活用すれば、広告運用、コンテンツ制作、SNS投稿などのマーケティング施策を、顧客のニーズに合わせて最適化できます。
- 広告では、ペルソナの関心や課題に沿ったコピーやビジュアルを作成
- コンテンツ制作では、興味を引くテーマや情報の深さを調整
- SNSでは、利用時間帯や好むハッシュタグに合わせて配信
ペルソナの行動パターンや購買心理を踏まえて施策を設計すれば、反応率やコンバージョン率の向上が期待できます。
カスタマージャーニーの作成
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知ってから購入・利用に至るまでのプロセスを旅に例え可視化したものです。
ペルソナを基に作成すれば、その人物がどんなきっかけで興味を持ち、どんな情報を集め、最終的にどこで購入を決断するのかを具体的に描けます。各段階での行動や心理を整理すれば、接点ごとの課題や改善策を明確にでき、効果的なアプローチ方法を設計可能です。
商品・サービス開発への反映
ペルソナを基準に商品・サービスを開発することで、ユーザーが本当に必要としている機能や仕様を明確にできます。ニーズに合った機能を反映させれば、ペルソナに深く刺さる商品やサービスへとつながります。
また、たった1人のペルソナのニーズを満たす設計は、結果的に多くの人にも響きやすいのが特徴です。ペルソナを用いれば、機能の優先度を判断しやすくなるので、不要な機能を省き開発コスト削減につながります。
ペルソナ設定の前に知っておくべき3つの注意点
ペルソナ設定を効果的に活用するため、知っておきたい3つの注意点を確認していきます。
先入観や思い込み、理想像で作成しない
根拠のない想像や理想像でペルソナを作成すると、実際の顧客像とかけ離れたマーケティング施策になり、効果が薄れてしまいます。
必ずソースが明確な一次情報をもとに設定するのが重要です。一次情報は、アンケートやインタビュー、自社サイトのアクセス解析、営業担当者へのヒアリングなどです。
個人の経験や感覚だけで判断せず、データに基づいたペルソナ設定をすれば、説得力が高まります。
ペルソナを固定化しない
市場や顧客ニーズは常に変化するため、ペルソナも一度作って終わりではなく、定期的な見直しが欠かせません。
初期に設定したペルソナは、時間の経過とともに現実の顧客像とズレている可能性があるからです。市場の動向やトレンド、経営戦略の変更、新たな競合の出現などによって、顧客層が大きく変わるケースもあります。
定期的にデータを収集し、必要に応じてペルソナをアップデートすることが大切です。
時間的コストがかかる
ペルソナ設定には、調査からデータ分析、社内での共有・理解まで多くの時間とリソースがかかります。
特にBtoBやニッチな市場では、調査対象者のリクルーティングが難しく、手間がかかることも少なくありません。負担を軽減し効率的に進めるためには、専門の調査会社や外部のリサーチパートナーの活用を検討するのも選択肢の一つです。
まとめ|適切なペルソナ設定がマーケティング成功のカギ
ペルソナは、マーケティングにおいて理想的なユーザー像を描く仮想のモデルです。
顧客理解や社内の共通認識、マーケティング精度を高めるために重要で、さらにAIツールを組み合わせることで現実的な顧客像が描けます。ペルソナ設定の情報収集には、アンケートやインタビューなどの調査が重要で、調査会社を活用し効率化できます。
マーケティング施策の精度を高め、ターゲットに響く効果的な戦略実現のため、ペルソナの設定は大切な作業です。