会場調査(CLT)とは?五感で測る仕組みとホームユーステストとの違い

会場調査(CLT)とは?五感で測る仕組みとホームユーステストとの違い
目次

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新製品開発の現場では、対象者を会場に集めて五感で評価してもらう「会場調査(CLT)」が残り続けています。理由は単純で、味覚・嗅覚・触覚といった五感は、画面越しでは測れないからです。一方、「会場調査」には留意点もあります。本記事では、「会場調査」の仕組みと種類、業界に整備された自主ルールに基づく設計、「ホームユーステスト」やネット調査との違い・使い分けを、Gallup International Association(GIA)加盟・65年以上の歴史を持つ年の株式会社日本リサーチセンター(NRC)が解説します。

この記事の要点
  • 五感を測る「会場調査(CLT)」の重要性:ネット調査では代替できない、味覚や触覚などのリアルな評価プロセスとその仕組みを解説します。
  • 厳格な調査設計と業界ルール:順序効果を防ぐローテーション設計(JIS規格準拠)や、JMRA綱領に基づく対象者の権利保護について紐解きます。
  • 最適なリサーチ手法の使い分け:ホームユーステスト(HUT)やネット調査との違いを比較し、目的に応じた選択基準を提示します。

「会場調査(CLT)」とは|定義・3つの種類・歴史

「会場調査(CLT)」とは|定義・3つの種類・歴史

この章ではまず「会場調査」の定義、3つの種類、歴史、費用感を整理します。

「会場調査(CLT)」の定義

「会場調査」とは、対象者を会場に集めて、製品やサービス、広告、コンセプトに対する反応を測る調査手法です。英語ではCentral Location Testといい、頭文字をとって「CLT」とも呼ばれます。

最大の特長は、条件を揃えた同じ環境のもとで複数の対象者に同じ試料(試食・試飲する商品サンプル)を提示できる点にあります。試食、試飲、香りの評価、パッケージへの反応など、五感を使った評価が求められる場面で強みを発揮します。

「会場調査」の3つの種類|①ギャングサーベイ、②CLT、③グループインタビュー

「会場調査」は、運営形式によって大きく3種類に分かれます。

種類形式主な用途
①ギャングサーベイ対象者を会場に集めて一斉にアンケートパッケージ評価、コピー評価、CM素材評価
②CLT(セントラル・ロケーション・テスト)対象者を会場に集めたうえで個別面接試食評価、官能評価、商品コンセプト評価
③グループインタビュー6名前後を集めて座談会形式商品開発の探索、ニーズの深掘り

業界では、これら3種類全体をまとめて「会場調査」と呼ぶ場合と、②の個別面接型のみを指して「会場調査=CLT」と呼ぶ場合があります。本記事では、両方の意味を踏まえつつ、主に②CLT(個別面接型)に焦点を当てて解説します。

「会場調査」と「CLT」は同じ意味?

実務上はほぼ同じ意味で使われています。「会場調査」が業界一般語、「CLT」が学術寄りの用語です。両者を厳密に区別する場合は、上記3種類のうち②個別面接型を指して「CLT」と呼びます。

「会場調査」もまた標本調査の一形態であり、対象者をどう選ぶかが結果の信頼性を左右します。標本調査の基本については、第2回 標本調査と全数調査の違いも参考にしてください。

「会場調査」の歴史|1960年代以降の発展

「会場調査」は、米国で1960年代に発達した手法です。当時のマーケティング・リサーチでは、テレビCMの普及にあわせて、視聴者の反応について条件を揃えた環境で測る必要が高まりました。広告効果測定の現場で生まれた手法が、商品開発に応用される形で広がりました。

日本では1970年代以降に普及しました。たとえば、新製品の発売前に「味の濃さ」「パッケージの色合い」「キャッチコピーAとB、どちらが受けるか」を事前検証する場面で使われました。テレビCMを流す前に「どちらの広告案が記憶に残るか」を試写・評価する用途も典型例です。食品、化粧品、日用品など、五感に関わる商品カテゴリーで特によく使われています。

「会場調査」の費用感と実施期間の目安

「会場調査」は、企画から納品まで4〜8週間程度かかるのが一般的です。費用は、会場費、対象者への謝礼、対象者を集める調査員(業界では「リクルーター」と呼ばれる募集スタッフ)の人件費、運営スタッフの人件費で構成されます。サンプル数や試料の準備内容によって金額は大きく変わるため、案件ごとに見積もりが必要です。

ネット調査と比べると単価は高くなりますが、五感を使った評価や試料への直接的な反応を得たい場面では、「会場調査」でなければ代替できないデータが取れます。

「順序効果」とローテーション設計|試料の出し方が結果を決める

「順序効果」とローテーション設計|試料の出し方が結果を決める

この章では、「会場調査」の精度を左右する隠れたバイアス「順序効果」と、その対策となる試料の提示順設計について解説します。

試料の出し方で結果が変わる「順序効果」とは

「順序効果」とは、複数の試料を順番に提示したときに、提示順によって評価が変わってしまう現象です。たとえば、飲料A・B・Cを順に試飲してもらう場面を考えてみます。最初に口にしたAが基準になり、後から飲むB・Cが必要以上に「甘い」または「薄い」と感じられることがあります。

学術的にはキャリーオーバー効果とも呼ばれ、人間の五感を使って試料を評価する「官能評価」の現場では長く知られてきた現象です。「会場調査」の精度を語るうえで、避けて通れない論点になります。

なぜ提示順で結果が変わるのか

「順序効果」が発生する背景には、人間の感覚に関する3つの要因があります。

1つ目は感覚疲労です。複数の試料を続けて評価すると、味覚や嗅覚が次第に鈍ります。後半に出された試料ほど、本来より「薄い」と評価されがちです。

2つ目は感覚順応です。たとえば最初に塩味の強い試料を食べると、その後の試料は相対的に「塩味が弱い」と感じられます。

3つ目は記憶バイアスです。最初に印象的だった試料が基準になり、それ以降の評価が引きずられます。

日本の官能評価には標準規格がある|「JIS Z 9080」

日本の官能評価分野には、明確な標準規格が一つあります。それが「JIS Z 9080:2004 官能評価分析−方法」です*1。日本産業規格として定められたもので、食品開発・香料開発の現場で広く参照されている、いわば「官能評価のルールブック」です。

この規格では、「順序効果」を避けるための具体的な手順が示されています。

対策項目規格が定める内容
試料のコード化3桁の乱数を用いてコード化する
コードの変更試験ごとに試料コードを変更する
提示順の均等化各順番で等しい回数評価されるように順番を均等化する
大規模試験順番をランダム化する

3桁の乱数を使う理由は、評価者に試料の素性を推測させないためです。「A・B・C」のような単純な記号では、Aが基準のように感じられてしまうからです。

「JIS Z 9080」は、「会場調査」を設計するうえで最初に押さえるべき土台にあたります。

ローテーション設計の実際|全パターンを試せない場合の工夫

試料が多くなると、すべての提示順を網羅することが現実的でなくなります。試料が4つあれば順列は24通り、5つあれば120通りです。全パターンを実施するのは時間的にも費用的にも難しくなります。

このような場合に使われるのが「不完備形実験計画法」です。全パターンを試すのではなく、各試料が各順番で同じ回数だけ評価されるように組み合わせを設計します。具体的な組み合わせの設計については、統計の専門書を参照するか、専門的なノウハウを持つ調査会社へ相談することをおすすめします。

評価尺度の選び方|6段階尺度の例

「JIS Z 9080」では、官能評価で用いる尺度の例も示されています。たとえば強度を評価する6段階尺度は、「全くない/非常に弱い/弱い/中程度/強い/非常に強い」の段階で構成されます。

奇数段階の尺度は中央値(どちらでもない)が選びやすく、偶数段階は中庸を排除して判断を迫る効果があります。商品評価では偶数段階、強度評価では奇数段階を使い分けるのが一般的です。

調査対象者の集め方|業界ルールに基づく対象者募集の設計

この章では、「会場調査」の対象者をどう集めるか、そして集め方を律する業界ルールについて整理します。

対象者の集め方の2パターン|街頭での声かけとパネル事前募集

「会場調査」の対象者の集め方には、大きく2つのパターンがあります。

1つ目は街頭での対象者募集です。調査会場の近くで道行く人に声をかけ、対象条件を確認したうえで会場に案内します。条件を満たす人にその場で参加してもらう方式で、業界では「街頭リクルート」と呼ばれます。

2つ目はパネル事前募集です。調査会社が登録しているモニター(リサーチパネル)から、属性に合う人に事前に連絡を取り、参加予約を入れてもらいます。

街頭での声かけは、その日のうちに対象者を集められる即応性が強みです。一方、パネル事前募集は、属性条件を厳密にコントロールしやすく、対象者の参加意欲も高いという特徴があります。

「会場調査」の母集団は「試料に反応する全消費者」ですが、実際の標本は街頭で出会った人やパネル登録者で構成されます。母集団と標本の関係については、第3回 母集団と標本の違いも参考にしてください。

「会場調査」には業界自主ルールがある

「会場調査」には、業界の自主ルールがある程度整備されています。日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が定める「CLTガイドライン」(1998年初版/2018年改訂)と「マーケティング・リサーチ綱領」(2025年9月26日に最新改訂)が、調査会社の運営基準として機能しています*2

これらは法律ではなく業界の自主規範ですが、JMRA正会員社にとって遵守は必須とされ、違反した場合は「協会の諸規程に則って厳正な措置」が行われると綱領に明記されています。

CLTガイドラインが定める運営要件

「CLTガイドライン」が定める主な運営要件は次のとおりです。

運営要件内容
管理責任者終日常駐し、調査全体の進行管理を行う
リクルーター数1会場あたり常時3名まで
身分証明協会発行のプレートを首にかけて着用
新人教育8項目の基礎ガイダンスと実地訓練
トラブル対応対応マニュアルの整備と協会への報告

「リクルーター」とは、街頭で対象者に声をかけて会場に案内する役割の調査員のことです。新人リクルーターには、市場調査の目的と意義、JMRAの綱領、プレートの利用、面接の倫理、対象者の選定法など8項目のガイダンスが定められています。基礎訓練を経ない人がいきなり街頭に立つことはありません。

道路使用許可と「新宿西口ルール」|地域別の運用

街頭で対象者に声をかける際には、場所によっては所轄警察署で道路使用許可証を取得する必要があります。許可の運用は地域によって異なり、たとえば渋谷では業界の交渉により許可不要となっています。一方、新宿西口では2018年改訂で「新宿西口ルール」という業界自主規制が導入されました。

ガイドライン整備の背景には、「キャッチセールス」(アンケートを装って高額商品を売りつける手口)との明確な差別化があります。調査員のマナーや身分明示が厳しく定められているのは、このためです。

適切な調査時間と所要時間|10:00-17:00・30分以内

「CLTガイドライン」では、設計段階での目安も示されています。

  • CLT会場での1日の調査時間:午前10時〜午後5時を原則とする
  • 会場での所要時間:長くても30分程度
  • スクリーニング質問:A4で1〜2頁、1分以内
  • 割り当て回収数:調査員に過度な負担をかけない数

これらの目安は、対象者の集中力や調査員の稼働量を考慮した実務的な基準です。「無理な数を1日で取り切ろうとしない」という設計姿勢が、結果の質を支えます。

出現率10%以下なら別手法へ|採択基準

ガイドラインには、「調査対象者の出現率が10%以下の調査は、この手法にこだわらず別の有効な手法を提案する」という採択基準があります。10人に1人未満しか該当しないような厳しい条件では、街頭で対象者を見つけるコストが現実的でなくなるためです。

希少な属性が対象になる場合は、パネル事前募集型のCLT、あるいは別の手法(オンラインインタビューや訪問調査)への切り替えが検討されます。

「会場調査」と「ホームユーステスト(HUT)」・「ネット調査」の使い分け

「会場調査」と「ホームユーステスト(HUT)」・「ネット調査」の使い分け

この章では、「会場調査」を選ぶべき場面と、別の手法(「ホームユーステスト」、ネット調査)を選ぶべき場面の判断軸を整理します。

「会場調査」と「ホームユーステスト(HUT)」はどう違う?

「会場調査」が「条件を揃えた環境で五感を測る」手法だとすれば、「ホームユーステスト」(Home Use Test、略称HUT)は「日常文脈で連続使用を測る」手法です。

「会場調査」では、温度や湿度、提示順序、評価環境を全て揃えた状態で対象者に試料を渡します。これにより、対象者間の評価条件のブレが最小化されます。

「HUT」では、対象者の自宅に試料を送り、実際の生活シーンで一定期間使ってもらいます。たとえば洗濯洗剤を1週間使う、シャンプーを2週間試す、といった使い方です。連続使用や反復評価が必要な商品では、「HUT」でなければ得られないデータがあります。

選び方の基本は、評価対象の特性で決まります。試料の重量・温度・五感が重要なら「会場調査」、連続使用の評価が必要なら「HUT」です。

3手法の比較表|評価対象・コスト・期間・代表性

「会場調査」、「HUT」、「ネット調査」を5つの軸で並べてみます。

「会場調査(CLT)」「ホームユーステスト(HUT)」「ネット調査」
評価対象五感、その場の反応、CM・パッケージ連続使用、日常文脈での反応認知、態度、購入意向
コスト目安高(会場費+人件費+謝礼)中(試料配送+謝礼)
期間企画から納品まで4〜8週間試用期間込みで4〜10週間1〜2週間
サンプル代表性中(条件は揃うが選定が偏りやすい)中(パネル中心)高(大規模パネルで属性配分可)
評価の深さ深(直接観察可能)中(自記式中心)浅(量重視)

費用は「会場調査」が最も高く、「ネット調査」が最も低いという順序になります。ただし、得られるデータの種類が異なるため、単純な費用比較ではなく「何を測りたいか」で選択するのが正しい考え方です。

学術的裏付け|中野(2021)とZhang et al.(2020)

「会場調査」と「HUT」の違いは、学術論文でも整理されています。

中野優子(2021)「セントラルロケーションテストとホームユーステスト」*3は、両手法の長所・短所を表で比較した技術用語解説です。著者の中野氏は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門の研究員で、論文では「HUT」を「使用場面に近い状況での評価データを幅広い消費者層から取得したい場合や、長期的な評価結果が必要な場合に有効な手法」と整理しています。また、2020年の新型コロナウイルス感染拡大を機に、人との接触を抑える「HUT」が消費者データの取得方法として注目される可能性も指摘されました。

国際的な事例としては、Zhang et al.(2020) 「Journal of Dairy Science」103巻が、再構成プロテイン飲料の評価で「CLT」と「HUT」を比較した実証研究を報告しています。同じ商品でも、評価の場面が変わると消費者の反応が変わることを示した研究です。

判断軸|どの手法を選ぶべきか

3手法の使い分けは、次の問いで整理できます。

  • 試料を直接体験させる必要があるか → ある場合は「会場調査」か「HUT」
  • 連続使用や日常文脈が評価軸か → そうなら「HUT」
  • 大規模サンプルで属性配分を取りたいか → そうならネット調査
  • 提示順や環境を統制したいか → 「会場調査」

複数の問いに該当する場合は、組み合わせる設計も有効です。たとえば、コンセプト評価をネット調査で行い、絞り込んだ案を「会場調査」で深掘りするという二段階設計です。

参加者の権利と協力依頼の原則|業界自主ルールが守るもの

参加者の権利と協力依頼の原則|業界自主ルールが守るもの

この章では、「会場調査」に参加する人の権利が業界ルールでどう守られているかを解説します。

「会場調査」は危険?

「会場調査」について調べていると、「危険」「怪しい」「キャッチセールスと同じ」といった懸念に出会うことがあります。結論から言えば、JMRA正会員社が運営する「会場調査」は、業界自主規範に沿った安全な手法です。

懸念の背景には、街頭で声をかけられる手口の見分けにくさがあります。アンケートを装って高額商品を売りつけるキャッチセールスと、まっとうな「会場調査」の対象者募集は表面上は似て見えます。だからこそ、業界は明確な差別化のルールを定めてきました。

「対象者は善意の協力者」|JMRA基準の3原則

JMRA「CLTガイドライン」には、参加者保護の3つの原則が定められています。

1つ目は協力強要の禁止です。ガイドラインは「調査への協力依頼は、あくまで対象者の自主的な協力に依存するものであり、一切協力を強要することがあってはならない」と定めています。

2つ目は途中退出の権利です。会場内で対象者が「協力しかねる」と伝えた場合、調査会社は「途中退出を妨げてはならない」とされています。

3つ目は誤誘導の禁止です。所要時間や謝礼について虚偽の説明をしてはならず、謝礼のみを強調する依頼も禁止されています。

これらの原則は、五感を使った深い評価を引き出す土台になる「信頼関係」を守るための仕組みです。「会場調査」と並ぶ別手法のひとつであるネット調査については、第1回 ネット調査の落とし穴で別の角度から解説しています。

信頼できる調査の見分け方|プレート・JMRA加盟・許可証

参加を依頼された場面で、信頼できる調査かどうかを判断する手がかりは3つあります。

確認ポイント信頼できる調査の特徴
身分証明調査員が協会発行のプレート(首かけ身分証)を着けている
運営会社調査会社がJMRA正会員社である(JMRA公式サイトで確認可能)
警察の許可街頭での声かけの場合、所轄警察署の道路使用許可証を持参している(※一部許可不要地域あり)

プレートの改ざんは禁じられており、調査員は身分を明示する義務を負います。「会社名を名乗らない」「会場の場所をはっきり伝えない」といった対応があれば、参加を控える判断が安全です。

「会場調査」のこれから|AI時代に残る五感調査の価値

「会場調査」のこれから|AI時代に残る五感調査の価値

この章では、AI技術が感覚評価に進出する時代に、「会場調査」がどう位置づけられるかを考えます。

AIによる感覚評価技術の進化|電子鼻・電子舌の登場

近年、機械学習による感覚評価技術が食品科学の研究テーマとして注目を集めています。電子鼻、電子舌、AI官能評価といった新しいアプローチが登場し、これまで人間の感覚に頼ってきた領域に、機械が踏み込み始めています。

電子鼻・電子舌の登場|AIは五感を測れるか

電子鼻は、複数のセンサーで揮発成分を検知し、香りのプロファイルを数値化する装置です。電子舌は、味覚センサーで甘味・酸味・塩味・苦味・うま味を測定します。再現性が高く、人間の評価より安定したデータを返すという強みがあります。

ただし、これらの装置が人間の評価を完全に代替できるわけではありません。「美味しい」「使いやすい」「安心できる」といった評価には、化学的な刺激の検知だけでは説明できない要素が含まれます。

「会場調査」が残る3つの理由|身体性・社会性・文脈依存

「会場調査」が将来も残り続けると考えられる理由は、3つあります。

1つ目は身体性です。食べる速度、飲む温度の経時変化、噛む回数、咀嚼の音といった身体動作は、人間が試料と関わる時にのみ生まれるデータです。電子鼻も電子舌も、これらを再現することはできません。

2つ目は社会性です。同じ場所に他の人がいると、人間の評価は微妙に変わります。これは「望ましさバイアス」と呼ばれることもありますが、マーケティング・リサーチや心理学の専門用語としては、「社会的望ましさバイアス(Social Desirability Bias)」が正確な名称です.

消費の現場(家族との食卓、友人とのカフェ)も同じく社会的場面です。「会場調査」は、社会的場面に近い条件で評価を取れます。

3つ目は文脈依存です。同じ飲料でも、朝の会議室で出されるのと、夕方のリラックスタイムで出されるのでは評価が変わります。「会場調査」は、想定される消費場面に近い文脈を会場内で再現できる柔軟性があります。

AIと「会場調査」は対立するものではなく、組み合わせる関係になっていくと考えられます。装置で測定可能な要素はAIが担い、人間の身体性・社会性・文脈依存はリアルな会場で取る、という分業です。

まとめ|「会場調査」が支える「五感のマーケティング・リサーチ」

まとめ|「会場調査」が支える「五感のマーケティング・リサーチ」

本記事の要点を整理します。

  • 「会場調査(CLT)」は対象者を会場に集めて五感で製品を評価する手法で、①ギャングサーベイ、②CLT、③グループインタビューの3種に分かれる
  • 試料を出す順番が結果を左右する「順序効果」への対策は、官能評価の標準規格「JIS Z 9080:2004」が乱数コード化・順番均等化・ランダム化・不完備形実験計画法という形で定めている
  • 調査対象者の集め方は街頭での声かけとパネル事前募集の2パターンで、JMRA「CLTガイドライン」(1998年初版/2018年改訂)と「マーケティング・リサーチ綱領」(2025年9月26日改訂)が業界自主ルールとして運営要件を規定している
  • 「ホームユーステスト(HUT)」が「日常文脈で連続使用を測る」のに対し、「会場調査」は「条件を揃えた環境で五感を測る」手法という根本的な役割の違いがある
  • 「対象者は善意の協力者」という業界基準のもと、協力強要の禁止・途中退出の権利・誤誘導の禁止が定められ、参加者の権利は業界全体で守られている

ネット調査が調査全体の約7割を占める時代でも、味覚・嗅覚・触覚に関わる商品評価は、会場でなければ測れません。電子鼻や電子舌などのAI技術が登場する一方で、人間の身体性・社会性・文脈依存を伴う評価は、これからも「会場調査」の役割として残り続けます。調査の設計や手法の使い分けについてのご相談は、1960年設立65年・GIA加盟のNRC(日本リサーチセンター)までお気軽にお問い合わせください。

株式会社日本リサーチセンター

株式会社 日本リサーチセンター

株式会社日本リサーチセンターは、1960年設立の老舗総合調査会社です。
長年の経験と実績を活かし、オフラインからオンラインまで多様な調査手法に対応。世界60か国以上の調査機関との連携により、海外調査も強みとしています。マーケティングリサーチから世論調査まで幅広い顧客の課題解決を支援します。

参考文献

*1日本産業規格 JIS Z 9080:2004「官能評価分析−方法」
*2JMRA「マーケティング・リサーチ綱領」JMRA「CLTガイドライン」
*3中野優子(2021)「日本食品科学工学会誌」68(2), 92-93. DOI: 10.3136/nskkk.68.92 Zhang et al.(2020) J. Dairy Sci., 103, 3107-3124.

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