郵送調査とは?メリットと成功の秘訣|他手法との比較、頼れる調査会社2社も紹介

郵送調査は、デジタル全盛の今も根強い需要があるマーケティングリサーチ手法です。とくに高齢者やネット利用が限定的な層、幅広い地域を対象とした大規模調査などで活用されています。
本記事では、郵送調査の特徴やメリット・デメリットに加え、回収率を上げるポイントや他手法との違いを詳しく解説します。最後にはおすすめの調査会社も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
郵送調査とは
郵送調査とは、あらかじめ設計された調査票を対象者の自宅などに郵送し、記入および返送してもらうことで情報を収集する調査手法です。マーケティングリサーチの分野では、数量的なデータを得る「定量調査」に分類されます。
分類 | 特徴 | 主な手法例 |
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定量調査 | 数値で表現できるデータを大量に集め、傾向や実態を統計的に把握する。 |
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定性調査 | 数値化できない意識や感情、行動の背景などを深く掘り下げて把握する。 |
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同じ定量調査に分類されるオンライン調査と比較するとスピード感では劣るものの、対象者のネット環境に依存せず広範な層にリーチできるのが特長です。また、匿名性の高さから、本音に近い回答を得られやすいという点でも注目されています。
デジタル時代にあえて郵送調査を選ぶ理由とは|メリット3選
インターネット調査が主流となった今、郵送調査は一見すると時代遅れに映るかもしれません。しかし、あえて郵送という手段を選ぶ調査担当者がいるのには明確な理由があります。
ここでは、郵送調査ならではのメリットを3つに絞って見ていきましょう。
幅広い層にアプローチできる
郵送調査は、インターネット環境が整っていない地域や、日常的にWebを利用しない高齢者層にもリーチできる手法です。そのため、ネット調査ではカバーしきれない属性へのアプローチが可能であり、調査対象を限定せず幅広く意見を集めたい場合に効果的です。
特定の世代や地域に偏りなくデータを収集したい調査において、郵送調査は有力な選択肢となります。
本質的な意見を引き出しやすい
郵送調査では、調査対象者が自分のタイミングで回答を進められるため、時間的な制約や心理的プレッシャーが少なくなります。その結果、表層的な反応ではなく、熟考の末の本音を引き出しやすいのが特長です。
対面式や電話調査では得にくい、内省的な回答や丁寧な記述内容が得られる点は、質を重視する調査にとって大きな強みとなります。
費用対効果に優れている
対面調査や会場調査のように、調査員の人件費や会場のレンタル費用が発生しないため、相対的にコストを抑えられるのも郵送調査のメリットです。
また、調査対象リストを事前に精査し送付先を限定できるため、不要なコストや回答のムダ打ちを減らせます。
郵送調査の課題と留意点|デメリット3選
郵送調査には独自の強みがある一方で、実施に際しては特有の課題や注意点も存在します。実施を検討している場合は、3つの代表的なデメリットを事前に押さえておきましょう。
回収率が不安定になりやすい
郵送調査は回答者が任意で返信する形式であるため、回収率が調査ごとにばらつきやすいという課題があります。回収率が予測しづらいため、計画通りにサンプル数を確保できないケースも少なくありません。
とくに、対象者に対する調査の重要性や信頼性が十分に伝わっていない場合、返信されずに終わってしまうことも多く、全体のデータ精度にも影響を及ぼします。
実施から結果回収までに時間がかかる
郵送調査では、以下のような工程が必要です。
- 調査票の印刷・封入・発送
- 対象者による記入と返送
- 回収後のデータ入力や集計作業など
インターネット調査のように即座に結果が得られるわけではなく、調査全体のリードタイムが長くなる傾向にあります。そのため、スピードが求められる意思決定や、短期間で複数回の調査を行いたいケースには不向きです。
設問設計の精度が調査結果に直結する
郵送調査は、対面型の調査手法と違い回答中に調査員による補足や説明ができないため、設問のわかりやすさや意図の明確さが非常に重要です。そのため、調査票の設計段階で細部まで検討し、対象者が迷わず答えられる構成にする必要があります。
質問文のあいまいさや回答選択肢の不備があると、誤解や誤記入を招き、データの信頼性が損なわれる恐れがあるので注意しましょう。
郵送調査の具体的な活用シーン

郵送調査は、特定の対象層や調査目的に対して有効性を発揮する手法です。ここでは、ビジネスや社会調査において実際に活用されている代表的なシーンをご紹介します。
企業の顧客満足度調査
自社製品やサービスを利用した顧客にアンケートを郵送し、使用感や満足度を把握する調査に活用されています。大きな理由としては、郵送調査の匿名性の高さは対面や電話では伝えにくい不満や改善要望を引き出しやすく、率直な意見を得るのに適しているからです。
また、紙のアンケートは企業側からの誠意や丁寧さを感じさせやすく、ブランドイメージの向上にも寄与する場合があります。
健康意識調査
高齢者や地方在住者を対象とした健康意識調査にも郵送調査は有効です。例として、以下のような調査が挙げられます。
- 生活習慣病予防のための意識調査
- 自治体が実施する保健活動に関するアンケート
これらの対象層は、インターネット環境へのアクセスが限定的であることも多く、郵送という手段が情報の取得手段として信頼されています。
郵送調査の回収率を向上させるには?実践すべき4つの工夫
郵送調査では、回収率の高さが調査の成否を左右するといっても過言ではありません。ここでは、回答率を高めるために実践したい4つの工夫をご紹介します。
事前の案内状で信頼を得る
調査票を送付する前に案内状を別送または同封することで、回答者の不信感を払拭できます。とくに気を付けたいのは、以下のポイントです。
- 企業や自治体名での送付
- 差出人情報の明記
- 調査目的や趣旨の丁寧な説明
案内状があることで「正当な調査である」と認識されやすく、回答協力率の向上が見込めます。
記入・投函の手間を減らす
設問設計は、読みやすさと回答のしやすさを重視しましょう。たとえば、以下のような工夫が有効です。
- 専門用語の多用を避け、平易な日本語で表記する
- 選択肢形式を中心にする
- 設問数を最小限に抑える
また、返信用封筒に切手を貼付しておくことで、投函までの心理的・物理的ハードルを下げられます。
リマインドや督促状で回答を促す
一定期間内に回答が得られない場合は、フォローアップのリマインドが有効です。文面は丁寧かつ簡潔にし、協力への感謝と再送付の必要がないことを明記しましょう。
丁寧な対応は対象者の信頼感を高めるだけでなく、企業の誠意ある姿勢として伝わり、回答意欲にもプラスに作用します。
謝礼を提供する
謝礼は、回答率に直接影響する重要な要素です。たとえば、図書カードやクオカードといった金券形式のものは高いモチベーションを生みやすくなります。
全員に配布する形式だけでなく、抽選式でプレゼントが当たる方式も効果的です。対象者の年齢層や関心に合った謝礼を選定することで、協力意欲をより高められます。
郵送調査と他の調査手法との違い

ここでは、郵送調査と他の調査手法と比較することでその特性や活用シーンをより明確にしていきましょう。
以下で、代表的な3つの手法と郵送調査を比較し、それぞれの違いを解説します。
インターネット調査との比較|スピードか、丁寧な回答か
簡潔にまとめると、インターネット調査はスピード重視、郵送調査は回答の質重視です。
インターネット調査 | 郵送調査 |
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対象者の年齢層や地域性、インターネット利用状況などを加味して判断しましょう。
会場調査との比較|体験型か、記述型か
会場調査と郵送調査には、以下のような違いがあります。
会場調査 | 郵送調査 |
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会場調査はその場の反応を観察できるメリットがあるものの、会場の確保や運営コストがかかるため、実施のハードルは高めです。一方、郵送調査にはそのような物理的制約がありません。
電話調査との比較|リアルタイム性か、熟考性か
電話調査と郵送調査はいずれもアナログな手法ですが、いくつかの違いがあります。
電話調査 | 郵送調査 |
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電話調査は回答の即時性が特長として挙げられます。その場で補足質問が可能なのもメリットですが、回答者にとっては思考の整理が難しいこともあるので注意が必要です。
一方、郵送調査は即効性に欠けるものの、回答者が自分のペースで熟考した本音を引き出しやすいというメリットがあります。
他手法との連携で広がる郵送調査の可能性
郵送調査は、他手法と組み合わせることで、さらに効果的な調査が可能です。ここでは、代表的な連携例を紹介します。
郵送調査 ✕ インターネット調査
アンケート用紙にオンライン回答用URLを記載することで、紙とWebどちらでも回答できるハイブリッド型の調査形式です。これにより、紙への記入を負担に感じる層はオンラインから回答可能となり、全体の回収率向上につながります。
- オンライン回答はデータの自動集計が容易なため、分析作業の効率化にも貢献
- 紙回答と組み合わせることで、幅広い層へのアプローチと高品質なデータ収集を両立できる
郵送調査 ✕ ホームユーステスト
ホームユーステスト(HUT)では、試供品やパンフレットを対象者の自宅に送付し、一定期間の使用後に評価アンケートを回収します。このアンケートの部分に郵送調査が向いています。
この組み合わせは、使用感や購買意向など深いインサイトを引き出したい際に有効です。
- 商品と紙の調査票を同封することで、使用直後にそのまま記入してもらう導線を作れる
- 商品体験の鮮度を保ったまま、具体的かつリアルな意見を収集しやすくなる
郵送調査を任せるならココ!おすすめ調査会社2選
郵送調査は「設計」「発送」「回収」「集計」と複数の工程を伴うため、実績豊富な調査会社に依頼するのが安心です。
ここでは、郵送調査に強みを持つおすすめの調査会社2社をご紹介します。
日本リサーチセンター

参照元:株式会社日本リサーチセンター
郵送調査に長年の実績、官公庁・学術系調査にも強み、自社完結型体制
日本リサーチセンター(NRC)は、1960年設立の老舗調査会社で、日本における郵送調査のパイオニア的存在です。大規模な全国調査や学術調査、政府統計などの実績が豊富で、郵送調査におけるノウハウが蓄積されています。
また、自社内でアンケート発送から回収、データ入力・分析まで一貫して対応できる体制が整っており、高品質な調査運営が可能です。
- 調査設計からレポートまですべて任せたい企業
- 高齢者向けの調査を全国規模で実施したい企業、自治体、研究機関
日本インフォメーション

参照元: 日本インフォメーション株式会社
郵送・Web併用に強み、全国規模の配送・回収管理ノウハウ、柔軟な対応力
日本インフォメーションは、幅広い調査手法に対応する総合調査会社として、郵送調査も高い品質で提供している企業です。一人の担当リサーチャーが、リサーチ課題整理からリサーチ結果の報告までを一括で管理するため、安心して任せられます。
加えて、郵送調査とWeb調査のハイブリッド型にも柔軟に対応しており、状況に応じた調査設計が可能です。
まとめ
郵送調査は、デジタル時代においても高い有効性を持つ調査手法です。幅広い層へのアプローチや本質的な意見の収集に適しており、他の手法との併用でさらに可能性が広がります。 一方で、設問設計や回収率向上の工夫が成果を左右するため、豊富な実績を持つ調査会社の活用が効果的です。目的やターゲットに応じて賢く取り入れましょう。