ニーズ調査のはじめ方|調査手法や新規事業での活用事例、調査会社12社比較も

市場や顧客の潜在的な要求を捉える「ニーズ調査」は、新規事業の立ち上げや既存事業の改善を成功に導く重要なプロセスです。
本記事では、具体的な調査手法や実務での活用事例を解説するとともに、信頼性の高い調査会社12社を比較し、意思決定に役立つ知見を提供します。
ニーズ調査の基礎知識
まずは、顧客や市場の真の要望を把握するための基本知識を整理しましょう。
ニーズ調査とは
ニーズ調査は、顧客や市場が抱える潜在的な課題や要望を把握するためのマーケティング手法です。
そもそもニーズとは、日本語に言い換えると「要望」や「需要」といった意味になります。
顧客の声を表面的に収集するだけでなく、その背景や行動に隠れた本質的な要求を明らかにし、事業戦略や商品・サービス開発に活かす役割を担っているのがニーズ調査です。
顕在ニーズと潜在ニーズの違い
顧客のニーズには2種類のタイプがあります。それぞれの特徴は、以下の通りです。
顕在ニーズ | ユーザー自身が自覚しており、アンケートやヒアリングで把握できる要望必要性や解決法まで理解している |
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潜在ニーズ | ユーザーが自覚していない、または言語化できていない要求漠然とした不満やなんとなくの理想がある段階 |
ニーズ調査で重視すべきは、このうちの「潜在ニーズ」です。潜在ニーズは、観察調査や定性分析を通じて初めて明らかになります。いかに潜在ニーズを掘り起こせるかが、調査の成否を左右します。
ニーズ調査の主な手法4種

ここでは、代表的な4つの調査手法と、それぞれの特徴を解説します。
アンケート調査
アンケート調査は、数値データとしてニーズを把握できる代表的な定量調査です。多数の回答を収集し統計的に分析することで、市場全体の傾向や優先度を明確化できます。
一方で、調査する側が用意した質問の範囲でしか答えが得られないため、潜在ニーズの把握には限界がある点に留意が必要です。
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デプスインタビュー調査
デプスインタビュー調査は、表面化していない潜在ニーズを把握することを目的に、対象者と一対一でじっくり対話を行う調査手法です。自由回答を深掘りすることで行動や価値観の背景に迫れます。
サンプル数は限定的ですが、定量調査では得られない深い洞察を得られる点が強みです。
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グループインタビュー調査
グループインタビュー調査は、複数の対象者を集め、意見交換を通じてニーズを多角的に検証する手法です。参加者同士の発言が相互作用することで、新たな視点や課題が浮き彫りになります。
ただし、発言の偏りや参加者の影響を受けやすいため、進行役がグループの橋渡し役として話し合いを円滑に導くことが大切です。
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エスノグラフィ調査
エスノグラフィ調査は、対象者が「どのように暮らしているのか」や「どのような行動をしているのか」を現場で観察し、深く理解する調査手法です。この手法は、対象者本人も自覚していない潜在的なニーズの発見につながります。
時間とコストはかかりますが、生活実態に即したリアルなインサイトを得られるのが大きな強みです。
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ニーズ調査の活用事例と成功ポイント

実務での活用事例を通じ、ニーズ調査を成功させるために押さえておきたいポイントを解説します。
新規事業の立ち上げ
新規事業の立ち上げ時に市場の実態や潜在ニーズを誤って捉えると、開発した商品やサービスが顧客に受け入れられず、売上や利用の低迷につながるリスクが高まります。そのため、段階的にニーズを深堀りすることが重要です。
- 消費者に実際に自宅で商品を一定期間使ってもらう「ホームユーステスト(HUT)」で使用実態を確認する
- 1対1で深く話を聞くデプスインタビューで背景要因を探る
上記のような複数の手法を組み合わせるのが有効です。
既存サービスの改善
既存サービスのリニューアルでは、「改善」や「満足度向上」を目的としたニーズ調査が効果を発揮します。
定量調査で全体傾向を把握しつつ、定性調査で具体的な課題を掘り下げることで改善施策の立案が可能になります。
定量調査の代表例 | 定性調査の代表例 |
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アンケート ネットリサーチ 郵送調査 | インタビュー 行動観察(エスノグラフィ) 訪問調査 |
専門分野の課題解決
一般的な調査だけでは捉えきれない独自のニーズが存在するのが、福祉や医療など専門性の高い分野です。これらの分野では、ニーズ調査を実施することで現場ならではの課題や言語化しにくい問題を可視化でき、適切な支援やサービス設計につながります。
厚生労働省は「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」を行い、地域福祉の施策に活用しています。
参考:介護予防・日常生活圏域ニーズ調査実施の手引き|厚生労働省
ニーズ調査の注意点|失敗を防ぐためのポイント
調査を効果的に行うためには、失敗を防ぐポイントを押さえておくことも重要です。ニーズ調査における注意点は、以下の通りです。
- 目的の明確化:何を知りたいのか、調査のゴールを最初に設定する
- 対象者の選定:ターゲット層が適切に反映されているか確認する
- 手法の選択:調査の目的や対象者、予算、期間などを踏まえ、定量調査と定性調査を効果的に組み合わせるなど、最適な手法を選ぶ
- 適切な設問設計:質問の表現や順序に注意し、回答者が正確に答えやすい設計にする
- 結果の分析・解釈:集めたデータをそのまま活用せず、背景や文脈を踏まえた洞察を導く
上記の点をしっかりと押さえて、ニーズ調査を成功へと導きましょう。
ニーズ調査におすすめの調査会社12選
最後に、ニーズ調査におすすめの調査会社を紹介します。
株式会社NeU

参照元: 株式会社NeU (ニュー)
NeU(ニュー)は、脳科学の技術を活用して人の心や行動の仕組みを科学的に解き明かすことを目指す日本の企業です。東北大学と日立が共同で設立した脳科学ベンチャーで、消費者の無意識の反応を生体データで捉える調査を得意としています。
NeUの調査は、人の目の動きや視線を追跡・計測する「アイトラッキング」や「脳活動計測」などで潜在的なニーズを可視化するのが特長です。
商品パッケージやWebサイトの改善のほか、機能性食品の評価や子ども向け調査にも活用できます。
株式会社ネオマーケティング

参照元: 株式会社ネオマーケティング
ネオマーケティングは、主に生活者視点を重視したマーケティング支援を提供しています。独自の「インサイトリサーチャー」が企画・設計から施策実行まで一貫して支援している点が強みです。
ネットリサーチ・インタビュー・訪問観察など幅広い手法を駆使し、クライアント企業が効果的なマーケティング施策を立てられるように支援しています。
また、新商品のアイデア創出や既存商品の改善、ECサイト構築・運営などのD2C支援にも力を入れています。
マイボイスコム株式会社

参照元:マイボイスコム株式会社
マイボイスコムは、1999年に伊藤忠グループの社内ベンチャーとして誕生したリサーチ会社です。主にインターネット調査を中心に、グループインタビューや会場調査などのオフラインリサーチを提供しています。
専門リサーチャーが調査票設計から結果報告まで一貫して対応するコンサル型リサーチが強みです。ネット調査とオフライン調査を組み合わせ、BtoC領域の市場理解や学術研究にも実績があります。
株式会社Brandism

参照元: 株式会社Brandism
Brandismは、ブランドマーケティングを中心としたコンサルティングを行っている企業です。企業のブランド価値の向上や、長期にわたる事業成長を支援しています。
顧客が明確に言語化できない「無意識の理由」や「隠れた欲求」を戦略的に引き出す調査が強みです。
アンケートやインタビューなど複数の手法を活用し、幅広い業界のマーケティング戦略や事業課題の解決に貢献します。
株式会社10

参照元: 株式会社10
株式会社10は、「共感」を重視したマーケティングリサーチを展開している企業です。主にオンラインコミュニティに調査対象者を集め、一定期間にわたって意見交換やアンケートを継続的に行い、消費者の本音や潜在的なニーズを引き出します。
特に、リサーチャーとコンサルタントが協働し、新サービスや商品開発の初期段階で潜在的な要求や課題を抽出する点が強みです。こうした顧客視点を重視した調査結果は、実践的な施策立案に役立ちます。
株式会社日本リサーチセンター

参照元:株式会社日本リサーチセンター
日本リサーチセンターは、60年以上にわたって国内外で多様なリサーチを実施し、企業の事業戦略や政策立案、学術研究などを支援してきた実績があります。
事業内容はマーケティングリサーチ全般で、ネットリサーチや会場調査・訪問調査・郵送調査・インタビューなど多岐にわたります。
ソリューションサービス「NRC UXリサーチ」は、ユーザー体験を深く掘り下げることで潜在的ニーズを発見し、見つけ出したニーズを基に、製品・サービス戦略やコンセプトの立案までを一貫して支援してくれる点が大きな特長です。
日本インフォメーション株式会社

参照元: 日本インフォメーション株式会社
日本インフォメーションは、主にマーケティングリサーチ事業を展開し、オフライン・オンライン両方の調査を幅広く行っている企業です。
経験豊富なリサーチャーがヒアリングから調査設計まで丁寧に対応し、ホームユーステスト・インタビュー・ネットリサーチなど多様な手法で消費者のニーズを把握します。
株式会社クロス・マーケティング

参照元: 株式会社クロス・マーケティング
クロス・マーケティングは、「デジタルマーケティング事業」「データマーケティング事業」「インサイト事業」の3つの主要事業を展開しています。年間1万件以上の調査実績と国内最大規模のアンケートパネルを保有しているのが強みです。
日本国内のみならず、海外にも拠点を持ち、グローバルなリサーチとコンサルティング体制を整えています。
楽天インサイト株式会社

参照元: 楽天インサイト株式会社
楽天インサイトは、国内だけでなく海外にも10拠点を持ち、グローバルなマーケティングリサーチにも対応可能です。
約220万人規模の自社パネルや楽天グループが蓄積する多種多様な行動ログデータなどを組み合わせることで、顧客の行動や購入プロセスを多角的に分析する調査手法が特長です。これにより、効果的なマーケティング施策の立案をサポートしています。
株式会社アスマーク

参照元: 株式会社アスマーク
株式会社アスマークは、特に飲料や食品、日用品などのメーカーの新商品開発や既存商品のリニューアルに関わる調査実績が豊富です。
また、HRテック分野にも進出し、従業員満足度(ES)調査や人事管理サービス「Humap」を提供するなど、多角的に企業支援を行っています。
迅速かつ高品質な調査対応で信頼を集めている企業です。
株式会社マクロミル

参照元: 株式会社マクロミル
株式会社マクロミルは、130万人を超える独自の消費者パネルと国内外の提携パネルを合わせて約1,300万人規模のネットワークを有しています。
株式会社マクロミルの調査は、単なるデータ提供に留まりません。データ活用を基盤とした経営戦略の支援や事業立ち上げにも携わり、総合マーケティングパートナーとして多くの企業のマーケティング活動に深く関わっています。
シーエスジー株式会社

参照元: シーエスジー株式会社
シーエスジー株式会社は、主に市場調査や企業調査を国内外で展開するリサーチ企業です。
海外調査に特化し、現地生活者への訪問や店頭インタビューを通じて、細かなローカル情報を収集しています。海外市場での商品・サービス開発の初期段階において、現地ニーズを詳細に把握できるのが強みです。
まとめ|ニーズ調査は事業成功のための必須プロセス
ニーズ調査は、顧客や市場の潜在的な課題や要望を把握し、事業戦略や商品・サービス開発に活かすための重要なプロセスです。
適切な調査手法を用いて顧客の本音や行動を深掘りし、得られたインサイトを基に改善や革新を図ることで、ユーザー満足度やブランド価値の向上にもつながります。