UXリサーチとは?ユーザー視点で商品・サービスを改善する調査手法

デジタル化が進む現代、製品やサービスの成功はユーザー体験の質に左右されます。多くの企業が「ユーザーの真のニーズ」を見つけられずにいる中、その解決の鍵となるのがUXリサーチです。
本記事では基礎知識から実践的な活用場面、国内の専門調査会社まで詳しく解説します。
UXリサーチとは何か?
UXリサーチは単なる市場調査とは一線を画す、ユーザー中心の深い洞察を得るための専門的な調査手法です。製品開発やサービス改善において、ユーザーの本音や無意識の行動パターンを明らかにし、真の価値創造を実現します。その独自性と重要性について詳しく見ていきましょう。
ユーザー体験の改善や発見に特化した調査
UXリサーチは、ユーザーが製品やサービスを利用する際の行動、思考、感情を体系的に調査し、体験価値の向上に活用する専門的な調査手法です。従来の市場調査が「何が売れるか」を探るのに対し、UXリサーチは「なぜ選ばれ、どう使われ、何を感じるか」という体験の全体像を解明します。
調査手法は、ユーザーインタビューによる深層心理の探索、エスノグラフィー調査での利用場面観察、ユーザビリティテストでの使いやすさ評価など多岐にわたります。特に重要なのは、統計データ収集にとどまらず、ユーザー一人ひとりの文脈や背景を理解する定性的アプローチを重視する点です。
近年では専門のUXリサーチャーが企業内外で活躍し、認知心理学や人間工学の知識を活かしてユーザー行動の背後にある動機や価値観を科学的に分析しています。
マーケティングリサーチだけでは見えない潜在ニーズの発見
マーケティングリサーチが市場の大きな流れや顕在化した需要を把握するのに対し、UXリサーチはユーザー自身も意識していない潜在的な欲求や課題を発見することを得意とします。
マーケティングリサーチは市場規模、購買動向、ブランド認知度といったマクロな視点でデータを収集し、ビジネス戦略立案に活用されます。一方、UXリサーチは個々のユーザーの具体的な利用場面に焦点を当て、操作のつまずきや感情変化といったミクロな視点で体験を分析します。
例えばアンケートで「使いやすさ」が高評価でも、実際の利用観察では特定機能で多くのユーザーが迷っているケースがあります。このような言語化されない課題や、ユーザーが諦めている不便さを発見できるのがUXリサーチの強みです。両者は相互補完的な関係にあり、連携により市場性と体験価値を両立した開発が可能になります。
UXリサーチが必要になる場面

企業が直面する様々な課題において、UXリサーチは強力な解決手段となります。製品ライフサイクルの各段階で異なるアプローチが求められますが、いずれも「ユーザー視点での価値創造」という共通の目的を持っています。具体的な活用場面を見ていきましょう。
新商品・新サービスの企画段階でユーザーニーズを探りたい
新規事業立ち上げで最も重要かつ困難なのは「解決すべき真の課題」を見つけることです。企業側の思い込みや技術志向だけで開発しても、ユーザーに受け入れられる保証はありません。
初期段階でのUXリサーチ実施により、市場に存在する未解決課題や、ユーザーが諦めている不便さを発見できます。探索的リサーチでは、ターゲットユーザーの日常生活や業務プロセスを詳細に観察し、直面している困難や工夫している点を洗い出します。
デプスインタビューでは表面的な要望だけでなく、背景にある価値観や期待を深く掘り下げます。このような初期投資は後の開発コストの無駄を防ぎ、市場投入後の成功確率を大幅に高めます。ユーザー起点で構築されたコンセプトは、競合との差別化要因にもなり得ます。
既存サービスの離脱率が高く原因がわからない
アクセス数は順調なのに継続率が低い、特定ステップで離脱が多発するといった問題は多くの企業が直面します。アナリティクスツールで「どこで」離脱しているかは分かっても、「なぜ」離脱するのかまでは見えません。
UXリサーチでは定量分析と定性調査を組み合わせて離脱の真因を特定します。まずファネル分析やコホート分析により離脱集中ポイントを特定し、該当ユーザー層の特徴を把握します。
次に該当ユーザーへのインタビューや利用場面の観察を通じて、離脱に至る心理的・物理的障壁を明らかにします。入力フォームの複雑さ、情報構造の分かりにくさ、期待との不一致など、数値データだけでは発見困難な原因を、ユーザーの生の声と操作観察から特定できます。
競合との差別化ポイントを見つけたい
成熟市場では機能や価格での差別化が困難になっています。このような状況で重要なのは、ユーザー体験の質で差をつけることです。UXリサーチを活用した競合分析により、自社の強みを活かした独自のポジショニングを確立できます。
競合サービスと自社サービスを実際にユーザーに使い比べてもらう比較調査は特に有効です。機能比較表では見えない、実際の使用感や感情的な満足度の違いが明確になります。
また競合が見落としているユーザーセグメントや利用シーンを発見することも可能です。単純な機能追加競争に陥らず、ユーザーにとって本当に価値のある体験を提供することが重要です。得られた洞察は製品開発だけでなく、マーケティングメッセージやブランディング戦略にも活用できます。
リニューアルや新機能の効果を検証したい
大規模リニューアルや新機能追加は必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。開発側の意図と実際のユーザー体験にギャップが生じることは珍しくなく、時には改悪となるケースもあります。
リリース前段階では、プロトタイプやベータ版を用いたユーザビリティテストを実施し、想定通りの体験が提供できているか確認します。タスク完了率、エラー発生率、主観的満足度などの指標を測定し、問題があれば改善を重ねます。
リリース後はA/Bテストによる新旧比較や、継続的なユーザーフィードバック収集により実際の効果を測定します。検証結果は次の改善サイクルへの貴重なインプットとなり、成功要因を他機能に展開し、失敗から学んだ教訓を組織知として蓄積することで、継続的な体験価値向上を実現できます。
UXリサーチに強みを持つ調査会社
UXリサーチの重要性を理解しても、自社だけで実施するのは容易ではありません。専門的な知識と経験を持つ調査会社をパートナーとすることで、より効果的な成果を得られます。日本国内でUXリサーチに特色のある調査会社を紹介します。
日本リサーチセンター:ワークショップ形式でユーザー価値を可視化

参照元:株式会社日本リサーチセンター
60年超の調査実績を持つ老舗企業でありながら、革新的なUXリサーチ手法を積極的に取り入れています。「NRC UXリサーチ」は単なるデータ収集にとどまらず、ユーザーの潜在的価値観や期待を引き出し、新戦略立案につなげることを目指しています。
特徴的なのはワークショップ形式を取り入れた参加型リサーチです。ユーザーと開発チームが直接対話し、共創的にアイデアを生み出すプロセスを通じて、従来調査では得られない深い洞察を獲得します。実際の製品やプロトタイプを用いた体験型調査により、UIの具体的改善点を発見し、実装可能な解決策まで導き出します。
ヴィアゲート:AIと視線・感情分析でインサイトを収集

参照元: ヴィアゲート株式会社
最先端AI技術を活用した革新的UXリサーチプラットフォーム「emomil(エモミル)」を提供しています。スマートフォンカメラを通じて、ユーザーの視線の動きや表情から感情を読み取り、コンテンツへの関心度や心理的反応をリアルタイムで測定します。
従来の自己申告型調査では捉えきれない無意識レベルの反応を可視化できる点が最大の特徴です。Webサイトやアプリ、動画広告などのデジタルコンテンツにおいて、どの要素が注意を引き、どこで興味を失うのかを客観的データとして把握できます。アジャイル開発やグロースハッキングとの相性も優れています。
ネオマーケティング:デザイン思考×リサーチの独自プログラム

参照元: 株式会社ネオマーケティング
マーケティングリサーチの専門性とデザイン思考を融合させた独自手法「インサイトドリブン®」を展開しています。この統合プログラムは消費者の深層心理(インサイト)発見から、アイデア創出、プロトタイプ制作、市場検証まで包括的にサポートします。
プロセスの特徴はリサーチとクリエイティブを分断せず一体的に進める点です。デプスインタビューで得られた洞察を即座にワークショップで具現化し、クラウドファンディング等を活用した実市場検証まで行います。実際にヘアケア製品開発など具体的成果も生み出しています。
Quest Research:生成AIインタビュアーで効率的な定性調査

参照元: 株式会社Quest Research
生成AI技術を定性調査に応用した画期的サービス「qork(コルク)」を提供しています。AIがインタビュアーとして機能することで、従来不可能だった規模での定性調査を実現しています。
最大の特徴は1対1の深い対話品質を保ちながら、100人規模の調査を短期間で実施できる点です。24時間で30名以上のインタビューデータを収集し、AIによる自動分析で即座に洞察を抽出します。人間では避けられない質問のばらつきや分析の主観性を排除し、一貫性のある調査結果を提供。アジャイル開発やリーンスタートアップ手法を採用する企業にとって強力な武器となります。
NeU:脳科学とアイトラッキングで無意識の反応を測定

参照元: 株式会社NeU (ニュー)
東京大学と日立製作所の共同出資により設立された、脳科学技術の社会実装を目指す企業です。アイトラッキング(視線計測)と脳活動計測(NIRS)を組み合わせ、ユーザーの無意識レベルの反応を科学的に測定する独自手法を確立しています。
言語化できない直感的な好みや、ストレスを感じる瞬間など、従来調査手法では捉えきれない深層心理を客観的データとして可視化します。Webサイトやアプリ評価だけでなく、パッケージデザイン、店舗レイアウト、広告クリエイティブなど幅広い領域で応用可能。感性価値や情緒的体験を重視する企業にとって新たな競争優位の源泉となり得ます。
マイボイスコム:ミステリーショッパー型の行動付随調査

参照元:マイボイスコム株式会社
インターネットリサーチ大手として知られていますが、UXリサーチ領域では独自の「行動付随調査(カスタマーエクスペリエンス調査)」を展開しています。自社モニターが実際に店舗やイベントを訪問し、リアルな体験をレポートする手法です。
デジタル上の体験だけでなく、実店舗での接客、商品購入プロセス、イベント参加など、リアルな場での体験を詳細に記録・分析します。来店から退店までの一連の流れにおける課題や改善点を、実際の顧客視点で洗い出します。O2O戦略を推進する企業や、オムニチャネル体験の最適化を目指す企業にとって貴重なサービスです。
プラグ:リサーチ×デザインでパッケージAI評価も提供

参照元: 株式会社プラグ
パッケージデザインで有名なアイ・コーポレーションと市場調査会社CPPの合併により誕生した、デザインとリサーチの両方のDNAを持つユニークな企業です。この背景を活かし、特に消費財パッケージ開発において強みを発揮しています。
注目すべきはパッケージデザインの良し悪しを評価するAIシステムの開発です。定性的評価に客観的指標を導入することで、デザイン効果を科学的に検証できます。コンセプト立案からデザイン制作、評価調査まで一貫サポート体制も整備。店頭での購買行動研究など、マーケティングとUXの交差点で価値を生み出します。
日本インフォメーション:定量・定性を網羅する総合的アプローチ

参照元: 日本インフォメーション株式会社
名古屋を拠点とする総合リサーチ企業として、定量調査と定性調査の両方をワンストップで提供できる体制を構築しています。アンケート調査、アクセス解析、A/Bテストといった定量手法と、インタビュー、観察調査、ユーザビリティテストなどの定性手法を自在に組み合わせます。
特にアイトラッキング技術を活用した視認性向上支援や、デプスインタビューと組み合わせた高度なユーザビリティテストに豊富な実績があります。経営層向けサマリーから現場向け具体的施策まで、各レベルに応じた提案を行います。複数調査手法を組み合わせた多角的分析を求める企業にとって強力なパートナーです。
マクロミル:国内最大級パネルで大規模データ分析

参照元: 株式会社マクロミル
数百万人規模の自社パネルネットワークを持つインターネットリサーチ最大手企業です。この圧倒的リソースを活かし、大規模かつ多様なユーザー層を対象としたUXリサーチを実施できます。
新機能評価の際には、事前の期待値測定、実装後のユーザビリティテスト、利用状況のログ分析といったマルチモーダルな調査設計が可能です。膨大なデータベースから適切なターゲットを抽出し、統計的に有意な結果を短期間で得られます。大規模調査が必要な企業や統計的裏付けを重視する企業にとって信頼できるパートナーです。
ビジネスのさらなる加速にUXリサーチを始めよう
UXリサーチは現代のビジネス環境において欠かせない戦略的投資です。ユーザー中心の視点で製品・サービスを継続的に改善することは、短期的な売上向上だけでなく、長期的なブランド価値構築にもつながります。
顧客満足度向上、コンバージョン率改善、競合との差別化、開発コスト最適化など、その効果は多岐にわたります。今こそ自社ビジネスにUXリサーチを取り入れ、ユーザーに真に価値ある体験を提供する第一歩を踏み出しましょう。
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