潜在顧客をビジネスにつなげるには?調査・分析に強い調査会社も紹介
企業の成長において、新規顧客の獲得は永遠の課題です。しかし、すでに商品やサービスを認知している顧客だけにアプローチしていては、いずれ成長は頭打ちになります。そこで重要になるのが「潜在顧客」です。
本記事では、潜在顧客の基本概念から効果的な発見方法、調査・分析を得意とする専門会社まで解説します。
潜在顧客とは何か?
潜在顧客という言葉は聞いたことがあっても、その定義やビジネスにおける位置づけを明確に理解している方は少ないかもしれません。ここでは、潜在顧客の基本概念と他の顧客分類との違いを整理します。
自社商品を必要としているのに気づいていない人たち
潜在顧客とは「自社の商品やサービスで解決できる課題を抱えているが、その解決策の存在に気づいていない人たち」を指します。
例えば、日々の業務で非効率な作業に時間を取られている企業があったとします。その企業は「効率が悪い」という漠然とした不満は持っているものの、明確な課題として認識していない状態です。このような企業が、業務効率化ツールの潜在顧客となります。
潜在顧客は問題や不満を感じているものの、解決する必要性や方法を認識していません。そのため、単に商品の機能や価格を訴求するだけでは購買行動につながりません。
まず彼らが抱える漠然とした不満を明確化し、解決の必要性を認識してもらうプロセスが必要です。
潜在顧客と顕在顧客の違いを理解する
マーケティング活動を進めるには、潜在顧客と顕在顧客の違いを理解することが重要です。
顕在顧客は、自分が抱える課題やニーズを認識しており、解決するための商品やサービスを探している人たちです。彼らは購買意欲が高く、複数の選択肢を比較検討している段階にあります。
一方、潜在顧客は課題を明確に認識していないか、認識していても解決の必要性や方法を知らない状態にあります。この違いはアプローチ方法に影響を与えます。
顕在顧客には、競合他社との差別化ポイントや自社製品の優位性を示すことが有効です。しかし潜在顧客には、まず課題の存在に気づいてもらい、解決の必要性を理解してもらうことから始める必要があります。
顧客の状態によって最適なマーケティング手法が異なるため、両者を区別して戦略を立てることが成功への第一歩です。
見込み顧客(リード)との関係性
マーケティング用語として「見込み顧客」や「リード」という言葉も使われますが、これらと潜在顧客はどのような関係にあるのでしょうか。
見込み顧客(リード)は、将来的に自社の顧客になる可能性がある人すべてを指す包括的な概念です。潜在顧客も顕在顧客も、見込み顧客の一部です。
企業によっては、これらを細分化せずに「見込み顧客」として扱う場合もありますが、効果的なマーケティングを行うには、見込み顧客をさらに分類することが推奨されます。
商品認知の有無、課題認識のレベル、購買検討段階などによって分類することで、それぞれの段階に応じた最適なアプローチが可能になります。潜在顧客は見込み顧客の中でも、課題やニーズが顕在化していない初期段階の層と位置づけられます。
このような分類により、マーケティングリソースの効率的な配分や、より精度の高いターゲティングが実現できます。
なぜ潜在顧客の開拓がビジネス拡大のカギになるのか

潜在顧客への注目が高まっている背景には明確な理由があります。ここでは、潜在顧客の開拓が企業の成長にとって重要な理由を解説します。
顕在顧客の数十倍という圧倒的な市場規模
潜在顧客の魅力は、その市場規模にあります。一般的に、潜在顧客の数は顕在顧客の数十倍に及ぶとされています。
これは氷山に例えられます。水面上に見える部分が顕在顧客だとすれば、水面下に隠れている部分が潜在顧客です。多くの企業は目に見える顕在顧客に注目しがちですが、水面下には大きなビジネスチャンスが眠っています。
B2B市場では、解決策を探している顕在顧客は全体の3%程度で、残りの97%は潜在顧客の状態にあるという調査結果もあります。この数字は業界や商品によって異なりますが、潜在市場の大きさを示すデータと言えるでしょう。
このような潜在市場を開拓できれば、企業の成長可能性は高まります。顕在顧客だけを対象にしていては限られたパイの奪い合いになりますが、潜在顧客まで視野に入れることで、新たな市場を創造できます。
適切なアプローチで顕在化できる可能性
潜在顧客は「関心がない無関心層」とは異なります。彼らは課題や不満を抱えており、適切な情報提供やアプローチによって、顕在顧客へと変化する可能性があります。
重要なのは、潜在顧客の課題意識を段階的に高めていくアプローチです。商品の売り込みではなく、まず彼らが抱える不満や課題に共感を示し、解決可能な問題であることを認識してもらいます。
そして、課題解決の重要性を理解してもらい、自社の商品やサービスが解決策となることを示していきます。このプロセスを「顧客の教育」や「ナーチャリング(育成)」と呼びます。
コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングは、潜在顧客を顕在化させる戦略として発展してきました。有益な情報提供を通じて信頼関係を構築し、購買意欲を高めていくアプローチは、多くの企業で成果を上げています。
潜在顧客を見つけるための3つの調査手法

潜在顧客の重要性は理解できても、実際にどのように見つければよいのでしょうか。ここでは、潜在顧客を発見し、その特性を理解するための代表的な調査手法を3つ紹介します。
インサイト調査で本音や隠れたニーズを発見する
インサイト調査は、潜在顧客の深層心理に迫る定性調査手法です。表面的な回答では得られない、本音や隠れたニーズを発見することを目的としています。
代表的な手法として、グループインタビュー(FGI)とデプスインタビューがあります。グループインタビューでは、複数の対象者による議論から予想外の意見やアイデアが生まれます。参加者同士の会話が刺激となり、普段は意識していない課題や要望が表出することもあります。
デプスインタビューは1対1で行う深層面接です。時間をかけて対話することで、対象者の価値観や行動の背景にある動機を探れます。「なぜそう思うのか」を掘り下げていくラダリング法などの技法により、本人も自覚していなかった潜在ニーズを引き出せます。
インサイト調査の成功には、熟練したインタビュアーが欠かせません。表情や声のトーン、沈黙の意味など、非言語情報も含めて分析する必要があるためです。
アンケート調査で大量データから傾向を把握する
アンケート調査は、大量のデータを効率的に収集できる定量調査手法です。インターネットを活用したWebアンケートなら、短期間で多くの潜在顧客候補から情報を収集できます。
アンケート調査の強みは、統計的に有意な傾向を把握できることです。「どのような属性の人が、どのような課題を抱えているか」といった相関関係を数値で示せます。これにより、潜在顧客のセグメンテーションや優先順位付けが可能になります。
ただし、効果的なアンケート調査には事前の設計が重要です。誰を対象に、何を聞くのかを明確にし、回答者が答えやすい質問設計を行う必要があります。
潜在顧客は自身の課題を明確に認識していないことが多いため、直接的な質問だけでなく、行動や状況を聞く質問を組み合わせることで、隠れたニーズを推測する工夫も必要です。
顧客データ分析で潜在層の特徴を推測する
既存の顧客データを活用した分析も、潜在顧客を発見する有効な手法です。購買履歴、ウェブサイトの行動ログ、問い合わせ内容など、企業が保有する様々なデータから潜在顧客の特徴を推測できます。
例えば、既存顧客の共通属性を分析し、同じ属性を持つが未購入の層を潜在顧客として特定する方法があります。機械学習を活用すれば、複雑なパターンを発見し、潜在顧客になる可能性の高い層を予測できます。
過去の顧客化プロセスを分析することで、潜在顧客から顕在顧客へと変化する際のトリガーやタイミングを把握できます。これらの知見は、効果的なマーケティング施策の立案に役立ちます。
データ分析の利点は、客観的な根拠に基づいた意思決定ができることです。データに裏付けられた戦略により、マーケティングの成功確率を高められるでしょう。
潜在顧客の調査・分析に強いリサーチ会社10選
潜在顧客の発見と分析には専門的なノウハウが必要です。ここでは、潜在顧客の調査・分析を得意とする10社の特徴と強みを紹介します。
株式会社ネオマーケティング:インサイトリサーチャーによる徹底支援

参照元: 株式会社ネオマーケティング
ネオマーケティングは、リサーチを軸に総合的なマーケティング支援を行う会社です。インサイト発見の専門家である「インサイトリサーチャー」が在籍しています。
同社の独自手法「インサイトドリブン®」は、デザイン思考とリサーチを融合させたイノベーション共創プログラムです。生活者起点のアイデア開発から、コンセプトメイキング、プロトタイプ作成、需要調査まで一気通貫で支援します。
注目すべきは、エクストリームユーザー(極端な特性を持つユーザー)へのアプローチです。一般的なユーザーでは見えてこない視点や潜在ニーズを発見し、革新的な商品・サービス開発につなげています。
調査の企画設計から分析、施策立案まで伴走支援してくれるため、社内にリサーチノウハウがない企業でも安心して依頼できます。
株式会社日本リサーチセンター:UXリサーチで潜在ニーズを可視化

参照元:株式会社日本リサーチセンター
1960年設立の日本リサーチセンター(NRC)は、長年の実績を誇る総合調査会社です。オフラインからオンラインまで幅広い調査手法に対応しています。
同社の「NRC UXリサーチ」は、潜在ニーズの可視化に特化したサービスです。ユーザーエクスペリエンスの観点から潜在するニーズを探り出し、イノベーティブな製品・サービスのコンセプトづくりを支援します。
調査設計から実査、ワークショップの運営、成果物の作成まで一貫して対応可能です。コンセプトマップやカスタマージャーニーマップなど、調査結果を具体的なマーケティング施策に落とし込むための成果物作成にも定評があります。
大手調査会社ならではのノウハウとリソースで、潜在顧客理解から戦略策定まで手厚くサポートしてくれます。
株式会社Brandism:言語化できない本音を発掘する

参照元: 株式会社Brandism
Brandismは、ブランドマーケティングの戦略構築から実行までの内製化を支援する専門会社です。
同社は「良いインサイト」を「顧客自身がまだ言語化できていない本能的な欲求に刺さり、新たな気づきを与えるもの」と定義しています。この定義に基づき、バイアスの裏に隠された本音を発掘するアプローチを展開しています。
定量調査と定性調査を組み合わせて市場を細分化し、ターゲット層を明確化します。その上で、ブランドのポジショニングをリードする上流戦略の設計をサポートします。
市場データ分析やユーザーインタビューを通じて顧客理解を深め、新規事業の立案支援も行うなど、ブランド戦略と顧客インサイト発掘の両面から企業を支えます。
株式会社NeU:脳科学で無意識の行動を分析

参照元: 株式会社NeU (ニュー)
NeUは、東北大学と日立製作所発の脳科学ベンチャーです。生体データ計測による無意識領域の解析を専門としており、従来の調査手法では捉えきれない深層心理に迫ります。
独自開発の小型脳計測デバイス(fNIRS装置)を用いた脳活動計測サービスが特徴です。アイトラッキング(視線計測)と脳波計測を同時に行い、視線だけでは捉えきれない感情や興味度合いを解析できます。
例えば、広告やパッケージデザインのテスト時に、瞳孔径の変化から注目度を定量評価し、脳活動データと組み合わせて「なぜ興味を感じたか」を感情レベルで分析できます。
学術知見に基づく公正な調査計画の立案を信条としており、科学的エビデンスで「お客様の本音」を明らかにしたいというニーズに応えます。
株式会社Quest Research:AIインタビューで定性調査を高速化

参照元: 株式会社Quest Research
Quest Researchは、AIを活用した高速・高品質リサーチを得意とする調査会社です。
生成AIを用いたインタビュー自動化プロダクト「qork(コルク)」が特徴です。大人数の消費者に対するオンラインインタビューを短期間で実施でき、得られた定性データをリアルタイムに定量分析できます。
従来のデプスインタビューはサンプル数が限られ、アンケートでは顧客の本音を深掘りできないという課題がありました。qorkはこの課題を解決し、定性調査でありながら量的エビデンスを伴うインサイト抽出を実現します。
リサーチャーが調査設計から示唆出しまで伴走し、AIによる分析サポートでインサイト発見やレポート作成をスピーディーに行うため、新規事業立ち上げや商品開発における仮説検証サイクルを高速化できます。
ヴィアゲート株式会社:AIチャットで本音を効率的に収集

参照元: ヴィアゲート株式会社
ヴィアゲートは、AIとデータを駆使して生活者の「本音(インサイト)」を収集・分析するプラットフォーム「emomil(エモミル)」を提供しています。
emomilの中核は、AIエージェントが自動でチャットインタビューを行う調査手法です。回答者一人ひとりの回答内容に即してAIが次の質問を投げかけ、対話を進める全自動インタビュー調査により、デプスインタビューの質とアンケート調査の量を両立します。
さらに無意識データの取得にも注力しています。スマホカメラでコンテンツ視聴時の表情や視線・感情を測定し、ユーザーがどこに注目し何に心を動かされたかを定量化します。
AIインタビューでその理由や背景を深掘りするハイブリッド調査フローにより、潜在顧客の興味を引くコンテンツ要素や購買を後押しした要因を詳細に解明できます。
シーエスジー株式会社:BtoB企業の潜在ニーズを直接ヒアリング

参照元: シーエスジー株式会社
シーエスジー(CSG)は、インターネットでは得られない深い洞察を提供する企業調査・市場調査の専門会社です。
BtoB領域の調査を得意としており、業界構造や企業の戦略内容といったウェブ上では掴みにくい情報を、経験豊富なエキスパートスタッフが直接ヒアリングして収集します。
営業窓口と調査者を兼ねる人員が体制を組んでいるため、クライアント企業の調査目的や背景を深く理解した上で、精度の高い調査設計を行います。
探索的調査にも定評があり、ターゲット市場内の複数企業へヒアリングを行うことで、市場規模の把握や新規参入先のニーズ発見に役立つ情報を提供します。海外でのBtoB調査にも対応でき、BtoBマーケティングにおける潜在顧客開拓で頼れるパートナーです。
株式会社市場開発研究所:生活環境でリアルな意見を把握

参照元: 株式会社市場開発研究所
市場開発研究所は、1968年設立の品質重視のマーケティングリサーチ専門会社です。長年培った調査ノウハウと全国規模の調査ネットワークを有しています。
「営業窓口=リサーチャー」体制が特徴です。担当者自らが調査設計から実施・分析まで一貫して携わるため、調査目的や背景を深く理解した上で、質問票のワーディング調整など細部までこだわった調査を提供できます。
ホームユーステスト(HUT)、会場調査(CLT)、オンラインインタビューまで幅広く対応可能で、自社会場も完備しています。HUTでは、被験者に実際の生活環境で試用品を使ってもらい、使用感の変化や継続利用による実感の推移を追跡することで、リアルな消費者インサイトを収集できます。
日本インフォメーション株式会社:豊富な手法でインサイトに迫る

参照元: 日本インフォメーション株式会社
日本インフォメーションは、リサーチから戦略提案までワンストップで支援する総合調査会社です。業界最大級のリクルートネットワークと、多様な調査専用施設を強みとしています。
定性調査の深掘りにおいて豊富な経験を持ち、デプスインタビューでは一人の生活者の意見を掘り下げてインサイトに迫ります。長年の実績から、ラダリング法やコラージュ法など高度なインタビューテクニックも活用可能です。
ハイブリッド調査にも対応しており、アイマート(模擬店頭棚)でのアイトラッキング調査で商品の視認状況を測定し、その結果を踏まえてデプスインタビューで評価理由を深掘りするなど、定量×定性を組み合わせた調査も提供できます。
株式会社クロス・マーケティング:国内最大級パネルで潜在層を理解

参照元: 株式会社クロス・マーケティング
クロス・マーケティングは、国内最大級のアンケートパネル(約1,285万人)を保有し、幅広いリサーチサービスとコンサルティングを提供する大手調査会社です。
「潜在リサーチ」と銘打ったサービスメニューを展開しており、生活者の価値観や実態を明らかにする「生活者理解調査」、顧客の購買行動をマッピングする「カスタマージャーニー分析」など、潜在顧客の行動理解に資する調査メニューを豊富に取り揃えています。
膨大なパネルを活かしてニッチなターゲットにもリーチでき、スピーディーに大規模調査を実施できます。単なる調査データ提供に留まらず、コンサルタントによる戦略的支援にも力を入れており、マーケティング課題の解決から事業戦略プランニングまで、リサーチの価値を最大化するサポートを行っています。
まとめ:潜在顧客の発掘から次のビジネス成長へ
潜在顧客は、企業の成長可能性を広げる存在です。顕在顧客の数十倍という規模を持つ潜在市場を開拓することで、新たなビジネスチャンスを創造できます。
潜在顧客を発見し、顕在化させるには、インサイト調査、アンケート調査、データ分析といった様々な手法を組み合わせることが重要です。それぞれの手法には専門的なノウハウが必要となるため、調査会社の活用も有効な選択肢となります。
本記事で紹介した10社は、それぞれ独自の強みを持っています。インサイトリサーチャーによる洞察、脳科学を活用した無意識の分析、AIを活用した効率的な調査など、自社のニーズに合った調査会社を選ぶことで、効果的な潜在顧客マーケティングが実現できるでしょう。
潜在顧客へのアプローチは、すぐに成果が出るものではありません。しかし、中長期的な視点で取り組むことで、企業の成長基盤を強化できます。まずは自社にとっての潜在顧客像を明確にし、適切な調査手法やパートナーを選んで、着実に進めていくことが成功への道筋となるでしょう。
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